地主会

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大正三年(一九一四)の日吉村会の記録(9)を見ると、大正二年度地主会決算書や、大正三年度事業計画が載せられている。それによると、小作人の保護奨励、稲作改良への協力、俵米の改良、小作人の表彰、米の共同販売など村農会活動の推進的役割を果しているように思われる。さて、この地主会は、いつ頃から組織されたものであろうか。長生郡郷土誌(長生郡教育会編)をひもとくと、長生郡農会の活動の中に「明治三七年(一九〇四)郡地主会の設立を図れり……」とある。
 
日吉村地主会歳入歳出決算書(大正2年度)
歳入
科目決算額予算額比較備考

第一款 会費

57,655

54,000

3,655
 第一項 会員負担金57,65554,0003,655会員増セシニヨル
 第二款 雑収入1,0001,000
 第一項 預金利子1,0001,000預金ナカリシニヨル
57,65555,0002,655
歳出
科目決算額予算額比較備考

第一款 事務所費

11,250

11,000

250
 第一項 備品消耗品費10,25010,000250支出ヲ多ク要セシタメ
 第二項 役員旅費1,0001,000
第二款 会議費1,85011,0009,150
 第一項 総会費1,5002,000500支出事項少キニヨル
 第二項 評議員会費3509,0008,650支出事項少キニヨル
第三款 事業費25,00025,000
 第一項 小作米品評会費20,00020,000支出ヲ要セサリシニヨル
 第二項 表彰費5,0005,000
第四款 負担金3,0003,000
 第一項 郡地主会負担金3,0003,000
第五款 予備費5,000250
 第一項 予備費5,000250
16,10055,00038,900
差引残金 41円55銭5厘 翌年ヘ繰越ス
   大正3年9月15日
       日吉村地主会長

 
 日露の風雲急を告げる年である。国が富国強兵の旗印のもと、農村の食糧増産のためのあらゆる施策を、農会の推進役である地主の団結によってなしとげようと企画したわけである。従って、この頃、日吉だけでなく、長柄や水上にも地主会が作られたものと思われる。
 以後地主会は、稲作改良の大きな力になっただけでなく、村政の中心となっていたが、終戦によって大きく変化してゆくのである。
 参考のため、日吉村地主会の決算書と、事業計画書をあげておく。
 
  大正三年事業細目経営方法議案(地主会)
一、小作人ノ保護奨励ニ関スル件
 地主小作間ノ親善融和ヲ図リ併セテ産米ノ改良俵装ノ改良普及ヲ主眼トシテ本年度ニ於テ左記事項ヲ実行スルモノトス
 (イ) 小作人奨励ノ為メ地主ヨリ小作人ニ給与スベキ奨励金左ノ如シ
  一、合格米甲一俵ニ対シ米二升五合
  一、同  乙一俵ニ対シ米一升五合
  一、同  丙一俵ニ対シ米五合
 (ロ) 小作米品評会ヲ開催スルコト
  小作奨励ノ為村農会ト連合シ小作米品評会ヲ開催シ以テ産米改良ヲ期スルコト
 (ハ) 地主及小作人ノ表彰ヲ行フコト
  地主ニシテ小作人ヲ愛撫シ奨励ニ勉メ他ノ模範トナルモノ及純良ナル精農小作者ヲ選定シテ之ヲ表彰スルコト
 (ニ) 票箋購入無代配布ノコト
  産米改良及俵装ノ完成ヲ期スルタメ票箋ヲ購入シ一般生産者ニ無代配布スルモノトス
  二、稲架乾燥励行ノ件
 稲架乾燥実行奨励ハ産米改良上最緊要ノ事ニシテ、先年来之ガ奨励ニ努ムルモ一般普及ヲ見ルニ至ラザルハ甚遺憾トスル所ナリ昨年ノ米穀検査ニ於ケル成績ハ乾燥不十分ナル為、変色ヲ来シ、品質ヲ陥セルモノ多キ状態ナルニ付本年ハ一層之ガ奨励ニ励ムル必要アルヲ認メ左記方法ニ依リ之ガ実行普及ヲ図ラントス。
 (イ) 一般稲作人ヲシテ此際必ズ全作ノ五割以上ヲ実行セシムルコト
 (ロ) 一小作人ニ対シテハ当該地主ヨリ小作料一俵ニ付三〇銭又ハ之ニ相当スル材料ヲ無利息ニテ貸与シ実行セシムルコト(以上)