繭市場の設立

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大正時代、最も注目すべきことは、茂原町高師に、長生郡販売購買利用組合(通称繭市場)が設立されたことで、大正一〇年八月のことであった。この組合は生産者にとっては、誠に救いの神にも等しいもので、繭取引が公正円滑に行なわれるようになったのである。
 昭和二年(一九二七)同組合より出された現況報告(4)の最初に、組合設立の動機を次のように述べている。
「本郡ノ養蚕業ハ年ヲ追フテ順調ナル発達ヲ遂ゲツツアルモ、収繭販売機関ノ設ケナク、毎年当業者ノ蒙ル損失甚ダ大ナルヲ以テ、是等ノ欠陥ヲ補フタメ最モ理想的且ツ万全ナル改善策トシテ繭ノ取引市場経営ノ必要ヲ感ジ、郡内養蚕業者ヲ誘導シテ、産業組合法ニ基キ、本組合ヲ設立シ、公正ナル取引ヲ行ヒ、本郡養蚕業ノ福利増進ヲ図ラントスルニ在ル」と。
 大正の終りから、昭和の始めにかけ、繭市場は、順調な発展を示し、時期になると、埼玉、山梨、長野、群馬などから数十社の業者が集まり、競売係の掛声も勇ましく、終日取引が行なわれた。
 昭和二年、繭市場に関係する組合員数(表7)は、養蚕戸数三一五八戸中二六二九人、そのうち長柄村七九人、日吉村五七人、水上村四人に上っている。また乾繭機の設備も年々充実し(表8)一日の乾燥能力は八八〇貫(三三〇〇キロ)から三八〇〇貫(一四二五〇キロ)と四倍以上の向上をめざし改善を加えている。
 
表7 長生郡養蚕組合数及び戸数(昭2 林勘五郎家文書)
町村名組合員数養蚕戸数町村名組合員数養蚕戸数
東浪見3140東 郷337322
太 東654207287
一 宮3555白 潟141188
土 睦201192南白亀108174
一 松188213豊 岡196363
八 積147141本 納37137
高 根275295新 治1346
豊 田242145西32
二 宮10184765
長 柄7938鶴 枝75131
茂 原12161五 郷11115
日 吉5729豊 栄612
水 上43長 南4232

 
 
表8 乾繭機の状況
名  称種 類原動機一日乾燥能力建 設
大和三光式(火熱)特1号型3馬力石油本乾 800貫大11.5 竣工
  〃 5号〃  〃 〃   80  〃
最新今村式(汽熱)特大号7段型蒸気汽灌 〃 3,000昭2.12 起工

 
 取引高(表9)も年々増加し、佐原繭市場とともに県下の双壁と称されている。
 
表9 茂原繭市場繭取引高累年別合計(林勘五郎家文書)
年 次春秋繭取引高取引総額一貫当り
円 銭円 銭
大正1131,540284,0439.739.94
 〃 1239,035371,01610.9111.07
 〃 1343,001304,7647.316.64
 〃 1465,364615,99911.1310.82
 〃 1567,866492,0498.066.28
昭和 296,571548,6647.126.98
 〃 3101,976620,7957.076.75
 〃 581,363264,4524.07
 〃 10157,012692,1863.884.19
 〃 15192,8851,916,3169.369.33