政府は、明治五年(一八七二)に国立銀行条例を出しこれによって本県にも、国立銀行が設置されたことは、前にのべた。その後明治二三年(一八九〇)に銀行条例を制定し二六年実施にうつしたが、これによると、今まで、私立銀行については、営業免許制度をとり、自由に放任されていたのを、政府が厳重に監督できることになり、銀行の社会的信用も加わり、預金額もふえ、面目を一新するようになった。
ところで、明治二七・八年の日清戦争で、我国は、清国から三億八千万円の償金を得て、明治三〇年に金本位制を採用したが、財界は好景気に恵まれ、全国的に企業熱が勃興し、このため、千葉県下の各地に銀行が新設されたのである。長生郡で明治三七年(一九〇四)一二月現在の銀行の状況をみると、上の表の如くで、その殆んどが明治二九年から三四年の間に創立されていることがわかる。この中、郷土に関係のある二銀行について次に記してみよう。
銀行名 | 所在地 | 創立年月 | 資本金(円) | 積立金(円) |
茂原商業銀行 | 茂原町 | 明治29.9 | 200,000 | 116,000 |
一宮 〃 | 一宮町 | 〃 31.3 | 100,000 | 100,000 |
長南 〃 | 庁南町 | 〃 32.1 | 30,000 | 30,000 |
日吉銀行 | 日吉村 | 〃 33.4 | 100,000 | 52,000 |
水上農商銀行 | 水上村 | 〃 33.5 | 20,000 | 17,000 |
帆丘銀行 | 帆丘町 | 〃 33.9 | 60,000 | 26,400 |