水上青年訓練農業補習学校

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「沿革誌」には、開校式に至るまでの経過を、次のように記してある。「大正一五年六月三〇日、青年訓練所規程ニ準拠シ、従前農業補習学校学則変更ヲ施シ、青年訓練所充用ヲ画シ、認可申請ノトコロ、大正一五年七月二九日、本県知事ヨリ認可書交付セラレ、茲ニ、水上村青年訓練農業補習学校ノ開設ヲ実現スルニ至レリ。而シテ大正一五年八月二〇日、村長青木安治ノ他有志職員参列開校式ヲ行ヘリ。」とある。つまり、補習学校の学則を変更、青年訓練所と一体化した授業や訓練ができるようにしたので、名称も、前述のようなものとなった。
 学則は、五章二八条に及び、詳細に作られていて、学校内容がよくわかるので、次に掲げておく。訓練の内容については、長柄とほぼ同様であると思われるが、詳細な記録は、保存されていないので、記すことができない。
 
   水上村青年訓練農業補習学校学則
     第一章 総則
第一条 本校ハ小学校ノ教科ヲ卒ヘ職業ニ従事スル青年ニ対シ職業ニ関スル智識技能ヲ授クルト共ニ心身ヲ鍛鎌シテ国民タルノ資質ヲ向上セシムルヲ以テ目的トス
第二条 本校ハ水上村青年訓練農業補習学校ト称シ水上尋常高等小学校ニ併置ス
第三条 本校ニ予科及本科ヲ置ク
第四条 本校ニ収容スル生徒ハ尋常小学校又ハ高等小学校ヲ卒業シタルモノ若クハ之ニ準スルモノトス
     第二章 教科目 修業期間 入学生徒資格
第五条 本校ニ於ケル教科目及修業期間左ノ如シ
     予科 修業年限 四ケ年 教科目 修身。国語。数学。理科。体操。農業。
     本科 修業年限 四ケ年 教科目 修身。及公民科。教練。国語。数学。歴史。地理。理科。農業
第六条 本校ニ於ケル学科課程表教校時間表ハ別紙ニ依ル
    一 修身
第七条 本校ニ於ケル各教科ノ教校要旨左ノ如シ
    一 修身及公民科ハ教育ニ関スル勅語ノ趣旨ニ基キテ道徳上ノ思想及情操ヲ涵養シ時代ノ趨勢ニ鑑ミテ国民生活ニ必須ナル心得ヲ授ケ実践躬行ヲ勧奨スルヲ以テ要旨トシ特ニ国家的観念及五憲ノ本義ヲ明徴ナラシメ国民トシテノ責務ヲ完カラシムルニ必要ナル事項ニ留意シテ之ヲ授ク。
    一 体操及教練ハ心身ヲ鍛錬シ堅忍剛毅ノ精神ト規律ヲ重ジ協同ヲ尚ブノ習慣トヲ養フヲ以テ要旨トシ教練ニ於テハ凡ソ左ノ事項ヲ授ク
 普通体操、兵式体操、撃剣、競技、各個教練、部隊教練、陣中勤務、旗信号、距離測量、軍事講話等
    一 国語ハ普通文ノ読解、漢文ノ初歩、作文習字ニ習熟セシムルモノトス。
    一 数学ハ算術、代数初歩、幾何初歩等ニツキ最モ職業ニ関スル日常ノ計算、実測ニ習熟セシメ且珠算ヲ練習セシム。
    一 歴史及地理ハ特ニ修身及公民科トノ連絡ヲ保チ我国体及国勢ヲ知ラシメ国民精神ヲ涵養スルニ必要ナル事項ニ留意シテ之ヲ授ク。
    一 理科ハ主トシテ農業ニ関係アル適切ナル事項ヲ選択シテ教授シ兼ネテ観察ヲ精密ニスル習慣ヲ養フヲ以テ要旨トス。
    一 農業ハ本村ニ適切ナル事項ヲ採択シテ教授シ且実習及見学等ヲナサシメ兼ネテ農村ニ対スル趣味ト勤労ヲ重ンズル習性トヲ養フヲ以テ要旨トス
第八条 本校入学生徒ノ資格左ノ如シ
     予科第一学年ニ入学スベキ者ハ尋常小学校卒業者及学齢超過ノ義務教育未終了者ニシテ尋常小学校ニ在ラザル者トス
      但高等小学校第一学年終了者ハ予科第二学年ニ高等小学卒業者ハ予科第三学年ニ入学セシムルモノトス。
      本科第一学年ニ入学スベキ者ハ予科卒業者及学校長ニ於テ予科卒業同上以上ト認定シタルモノトス。
第九条 学校長ニ於テ相当ノ学力アリト認メラレタル者又ハ特別ノ事由アル者ニ対シテハ本科教科目中ノ一部ヲ課セザルコトアルベシ。
     第三章 学年ノ始終及授業日並ニ教授時数
第十条 予科ノ学年ハ毎年四月一日ニ始マリ翌年三月三十一日ニ終ル 但第四学年ハ十二月三十一日ニ終ルモノトス
     本科ノ学年ハ毎年一月一日ニ始マリ十二月三十一日ニ終ルモノトス。
第十一条 本校ノ授業日教授時数及始終時刻左ノ如シ
    一 五月六月十月十一月ハ農繁期ナルヲ以テ休業トス。四月七月八月九月ハ昼間毎週水土ノ二日午後一時ヨリ三時迄トス
     十二月一月二月三月ハ夜間毎週月火木金ノ四日トシ午後七時半ヨリ九時半迄トス
     教練ハ教授季節中毎週日曜日午前九時ヨリ午後四時迄ノ間ニ行フ
      但八月ハ便宜ノ日時ニ行フモノトス
     第四章 入学退学賞罰及授業料
第十二条 本校ノ入学期ハ毎学年ノ始トス
     但止ムヲ得ザル事情アリ認トメタル者ハ中途之ヲ入学セシムルコトアルベシ
第十三条 本校ニ入学スルモノハ本村長ヨリ其ノ保護者又ハ雇傭者ニ通知ヲ経タルモノトス
第十四条 学校長ハ本村長ヨリ補習教育ヲ受クベキモノ、入学ニ関シ通告ヲ受ケル者ニシテ期日ニ於テ入学セザル者アル時ハ翌日直ニ其ノ旨村長ニ報告スルト共ニ其ノ家庭ニツキ入学ヲ督促スベシ
第十五条 学校長ハ本村長ヨリ補習教育ヲ受クベキモノノ入学ニ関シ通告ヲ受ケタルモノニシテ入学シタルモノアルトキハ直ニ村長ニ報告スベシ
第十六条 学校長ハ予科及本科ヲ卒業又ハ修了シタルモノアル毎ニ直ニ之ヲ村長ニ報告スルト共ニ其ノ所属青年団長ニ通知スベシ
     学校長ハ半途退学シタル者アル時ハ所属青年団長ニ対シ前項ノ手続ヲナスベシ
第十七条 本村長ノ承認ナキ者ハ半途退学ヲ許サズ
第十八条 学校長ハ左ノ一ニ該当スルモノニ対シ管理者及商議員会又ハ医師ノ意見ヲ聴キ退学ヲ命ズベシ
      但第三号ニ属スルモノニ対シテハ学校長ノ権限ヲ以テ停学又ハ退学ヲ命ズルコトアルベシ
    一 疾病其他身体虚弱ニシテ到底修業ニ堪ヘザルモノト認ムル者
    二 一家ノ生計ヲ支持スルガ為到底修業ニ堪ヘザルモノト認ムル者
    三 性行不良ニシテ到底改善ノ見込ナキモノ
第十九条 学校長ハ左ノ各号ノ一ニ該当スルモノニ対シテハ褒状賞品ヲ授クルコトアルベシ
     一 品行方正学業ニ勤勉ニシテ他ノ模範トスルニ足ル者
     二 家業ニ精励シ他ノ模範トスルニ足ル者
     三 有益ナル研究調査ヲ遂ゲタル者
     四 前各号ニ亘ル事項ニシテ最モ顕著ナルモノニ対シテハ学校長ハ村長ト合議シ村長学校長ノ名ニ於テ之ヲ表彰スルコトアルベシ
第廿条 本校本科ニ入学シタルモノニハ所定ノ青年訓練手帳ヲ所持セシム
第廿一条 他ノ青年訓練所ヨリ転学シタル者ハ本校ニ青年訓練所手帳ヲ提出スベシ
第廿二条 本校ヲ退学セムトスル時ハ其ノ事由ヲ述ベ且青年訓練手帳ヲ提出シ出席時数其他必要ナル事項ヲ記入証明ヲ授クベシ
第廿三条 本校生徒ニシテ居住所、身分等ニ変更ヲ生シタル時ハ其都度届出ヅベシ
第廿四条 授業料ハ之ヲ徴集セズ
     第五章 修了及卒業ノ認定
第廿五条 学校長ハ毎学年末ニ於テ出席日数学業成績及操行ヲ考査シ所定ノ課程ヲ修了セリト認メタル者ニハ左記様式ノ卒業証書並ニ証明書ヲ授与ス
 
   第  号  卒業証書
校印     氏名
           年  月  日  生
 
右者本校所定ノ課程ヲ卒業セリ仍テ之ヲ証ス
   年  月  日
千葉県長生郡水上村青年訓練農業補習学校長氏 名印
 
   第  号  証明書
校印     氏名
            年  月  日  生
 
右者本校ニ於テ青年訓練所ノ課程ト同等以上ノ課程ヲ修了シタルコトヲ証ス
   年  月  日
千葉県長生郡水上村青年訓練農業補習学校長氏 名印
第廿六条 本校ニ商議員ヲ置キ本校教育ノ全般ニツキ管理者又ハ学校長ノ諮問ノ機関トナル
     商議員ハ村ノ名誉職吏員其他各種団体代表者並ニ篤志者及学識名望家篤農家等中ヨリ学校長ノ意見ヲ聴キ村長之ヲ嘱託ス
     商議員会ハ村長学校長合議ノ上村長之ヲ召集シ其ノ会議ニ関シテハ村長議長トナル
      但教育ニ関スル事項ニツキテハ学校長之レガ議長トナルコトアルベシ
第廿七条 本校ニ督励員ヲ置キ本校生徒就学出席ノ督励ニ任ズルト共ニ兼テ校内外ニ於ケル指導誘掖ノ機関トナル
     督励員ハ在郷軍人会、青年団役員中ヨリ村長ト合議ノ上学校長之ヲ嘱託ス
     督励員会ハ村長学校長合議ノ上学校長之ヲ召集ス其ノ会議ニ関シテハ学校長之レガ議長トナル
第廿八条 学校職員ハ其ノ商議員会督励会ニ参与シ意見ヲ陳述ス

 
学科課程表及教授時間表
予科
学科目課  程時     数
一年二年三年四年
修身道徳ノ要旨、公民心得二〇二〇二〇二〇八〇
国語普通文ノ講読、作文、習字五〇五〇五〇五〇二〇〇
数学算術、筆算、珠算三〇三〇三〇三〇一二〇
体操普通体操、兵式体操、競技、武道一〇一〇一〇一〇四〇
理科
農業
理科大意、農業大意五〇五〇五〇五〇二〇〇
一六〇一六〇一六〇一六〇六四〇

 
本科
学科目課  程時     数
一年二年三年四年
修身及
公民科
道徳ノ要旨、国家的観念、立憲ノ本義四〇四〇四〇四〇一六〇
教練各個教練、部隊教練、陣中勤務、旗ノ信号、距離測量、軍事講話一〇九一一〇一一〇一一〇四三九
国語普通文講演、作文、漢文、初歩三五三五三五三五一四〇
数学実用数学二五二五二五二五一〇〇
歴史日本歴史大要、西洋歴史大要三二
地理日本地理総説、体外関係二四
理科理科大意二四
農業農業大意、実習指導見学四〇二五二五二五一一五
二六九二五五二五五二五五一、〇三四
(大正一五年六月三〇日申請
大正一五年七月二九日認可)