戸主会

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戸主会は、各町村毎に、一家の戸主全員が会員となって組織をつくり、講習会を開いて修養に努めたり、協同して仕事を発展させたりして、自治民としての資質を高めるためにつくられたものである。大正九年(一九二〇)一〇月二八日の長生郡町村長会指示事項の「社会教育ニ関スル件」の中に、「戸主会、婦人会等各地ニ設立ノ気運アリト雖未ダ不振ノ観ナクンバアラズ」と述べ、組織づくりをすすめることを促したが、翌一〇年六月二五日には、「町村戸主会設立ニ関スル件」として、長生郡においては、七か町村が未設置なので、速に組織をつくるよう指示している。この中に、日吉村と水上村が入っていた。しかし、これをきっかけとし、日吉・水上とも組織づくりが進められた。次に「日吉村戸主会々則」から、戸主会の概要をながめてみよう。
 まず、第一条の目的をみると、「左記綱領ニ基キ民力涵養ノ実ヲ挙グルコト」つまり、国力の充実を図ることであるとし、五つの綱領を掲げている。そして、第七条には、目的を達するための具体的事業として、次のような一二項目に亘る活動をあげている。
1 講演会講演会を開くこと。
2 三大節儀式には小学校に集り御真影を拝すること。
3 憲法発布に関する勅語の御趣旨の徹底に力めること。
4 敬神崇祖の実をあげること。
5 自治功労者篤志者の表彰をすること。
6 冠婚葬祭その他悪い風習を改善すること。
7 公会集合等に際し、時間を守ること。
8 会報を発行し、会員の修養と自治の開発に資すること。
9 隣り同志助け合うこと。
10 勤倹貯蓄を実行すること。
11 実業補習教育の振興を期すること。
12 産業組合を設置する等共同経営の実をあげること。

 会長、副会長は、村長と助役で、全村を一〇組に分け、組長をおいている。総会は年一回で、区毎に少くとも年四回の部会を開き、研究修養に努めることになっている。たしかに成人教育の場ではあるが、会員の自主性に基づくというよりも、上からの指示を伝達する機関であるという色あいが強くなっている。いま徳増区に保存されていた会則を次に掲げておく。
 
   長生郡日吉村戸主会々則(徳増区)
第一条 本会ハ左記綱領ニ基キ民力涵養ノ実ヲ挙クルヲ以テ目的トス
 一、立国ノ大義ヲ闡明シ国体ノ精華ヲ発揚シテ健全ナル国家観念ヲ養成スルコト
 一、立憲ノ思想ヲ明カニシ自治ノ観念ヲ陶冶シテ公共心ヲ涵養シ犠牲精神ヲ旺盛ニスルコト
 一、世界ノ大勢ニ順応シテ鋭意日新ノ修養ヲ積ムコト
 一、相互諧和シテ彼此共済ノ実ヲ挙ゲ以テ軽信妄作ノ弊ニ墜チサルコト
 一、勤倹力行ノ美風ヲ作興シ生産ノ資金ヲ増殖シテ生活ノ安定ヲ期スルコト
第二条 本会ハ日吉村戸主会ト称シ事務所ヲ日吉村役場ニオク
第三条 本村内ニ一戸ヲ構フル者ハ総テ本会々員トス
第四条 本会ニ左ノ役員ヲオク
 会長 一名   副会長 一名   評議員 十二名
 理事 十名   委員 十名    書記 一名
第五条 会長ハ村長ヲ以テ之ニ当テ会務ヲ総理ス副会長ハ助役ヲ以テ会長ヲ補佐シ会長事故アルトキハ之ヲ代理ス
 評議員ハ村会議員及各種団体役員等ニ会長之ヲ嘱託シ本会重要ノ事項ヲ評議ス
 理事ハ区長及区長代理ヲ以テ之ニ充テ本会決定事項ノ実践ヲ督励シ兼テ区内ノ事務ニ従事ス本会ヲ十組ニ分チ各組ニ組長一名ヲオク
 委員ハ組長ヲ以テ之ニ充テ理事ヲ補佐シ組合ノ事務ニ従事ス
 書記ハ会長之ヲ選任シ会長ノ命ヲウケ庶務ニ従事ス
第六条 本会ハ顧問及講師ヲオクコトヲ得
 顧問ハ名望学成アル者ニ付テ評議員会ノ決議ヲヘテ会長之ヲ推薦ス
 講師ハ会長之ヲ嘱託シ会員ノ指導及必行事項ノ奨励ニ当ルモノトス
第七条 本会ハ第一条ノ目的ヲ達スル為概ネ左ノ事業ヲ行フモノトス
 一 講習会講演会ヲ開催スルコト
 一、三大節等儀式ニ際シ小学校ニ集合シ御真影ヲ拝スルコト
 一、敬神崇祖ノ実ヲ挙クルニ努ムルコト
 一、憲法発布ニ関スル勅語ノ御趣旨ノ徹底ニ努ムルコト
 一、自治功労者並ニ篤農者等ノ表彰ヲ行フコト
 一、冠婚葬祭其他旧来ノ弊風陋習ヲ矯正スルコト
 一、公会集会等ニ際シ時間ヲ励行スルコト
 一、会報ヲ発行シ会員ノ修養ト自治ノ開発トニ資スルコト
 一、隣保相助ノ実ヲ挙クルコト
 一、勤倹貯蓄ヲ実行スルコト
 一、実業補習教育ノ振興ヲ期スルコト
 一、産業組合ヲ設置スル等共同経営ノ実ヲ挙グルコト
 一、其他必要ナル事項
第八条 本会ハ毎年一回総会ヲ開ク
  但シ必要ニ応ジ随時ニ之ヲ開クコトヲ得
第九条 総会ニ於テ会務ノ報告及毎年会員ノ必行スベキ事項ヲ決議スルコト
第十条 前条必行事項ノ方法ハ総テ規約ニ依ルモノトス評議員会ノ決議ヲ経テ会長之ヲ定ム必行事項方法ノ規約ハ之レヲ遵守スル為会員ヲ代表スル役員署名捺印スルヲ要スル
第十一条 各区ニ於テハ少クトモ毎年四回区部会ヲ開キ各種ノ研究打合セ等ヲナスモノトス但シ数区連合シテ開クコトヲ得
第十二条 本会則ハ総会ノ決議ヲ経ルニ非ザレバ変更スルコトヲ得ズ
 前項総会ノ決議ハ総会員ノ半数以上出席シ其ノ三分ノ二以上ノ同意アルヲ要ス
第十三条 本則施行ニ関スル必要ナル細則ハ会長之ヲ定ム
 右会則ヲ遵守スル為署名捺印スルモノナリ
会員             増田義朗印
             (以下 全員署名捺印)