道路愛護会

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道路の維持改良については、明治五年(一八七二)の大政官布告「道路掃除之儀」以来地方住民の責任としてたえず道路愛護の精神を鼓吹されてきた。すでに大正二年(一九一三)ごろ、鴇谷西部で道路保護会が結成され、その記念写真が残っているが、おそらくは他にもこのころ各区ごとに結成されたであろうが、規約なども発見出来ず、細かなことは不明である。そのころから各区の重要な行事として実施されて来たのであるが、それが再発足して名称を変えたのがこの道路愛護会である。すなわち昭和十年(一九三五)には、各町村に道路愛護会を結成するよう県から通達が出された。(12)
 それによると第一条に「道路愛護ノ精神ヲ涵養シ、国道府県道及市町村道シ維持改良ヲ図ル為、道路護会ヲ組織シ其ノ成績優良ナルモノハ本規定ニヨリ之ヲ表彰ス」とあり、第二条に「道路愛護会ハ市町村又ハ其ノ一部ヲ区域トスル青年団女子青年団婦人会在郷軍人分会消防組及道路愛護ヲ目的トスル団体ヲ以テ組織スルモノトス」となっている。
 そして、作業の実施要項や会則のひな形が示されたので、郡内各町村では、昭和十年、十一年の二年間にその結成を完了している。郷土の旧三村の結成(13)状況は、表4の通りである。
 
(表4)昭和10年9月現在道路愛護会結成状況
名 称結成会員代 表 者人員作業区域作業
回数
県道村道
長 柄在郷軍人
青年
助役 木村信太郎150m
8,000
年5
水 上同 上校長 渡辺茂1955,1205,9205
26町村中20ケ村結成,長柄は五区のみ結成
    昭和11年12月現在
日 吉村 民校長 中邨惣平5508,50013,1008
郡内26ケ町村すべて設置

 
 その後、昭和一二年(一九三七)一月二八日付茂原土木出張所長から「道路愛護会督励ニ関スル件」という文書が出されている。
 
 「昭和十年一月発布セラレタル道路愛護ニ関スル規程ノ趣旨ニ基キ管内各道路愛護会組織ノ下ニ着々ト発展ニ努メラレ其躍進振リハ実ニ目覚シキモノアルヲ欣幸トシ第三週年ノ好成績ヲ期待シテ已マザル次第ニ有之候。然ルニ最近組織ノモノハ別トシテ実施以来二ケ年ニ亘ル成績ヲ見ルニ組織当時ノ気勢ニ背反シ余リ作業ヲ実施セザルモノ或ハ著シク低下セルモノ又ハ成績遅々ナルモノ二、三アルヲ遺憾ニ堪ヘズ候。要スルニ近時高速交通機関ノ発達ニ鑑ミ……官民一致協力ノ精神ヲ以テ会員各位ヲ激励シ猶一層ノ御努力相成度シ……」
 
とし、各町村の成績表が示されている。本町は(表6)の通りであるが誠にきついものであった。
 
(表5)道路愛護会成績調(茂原土木出張所)
名 称会員数昭和10年昭和11年作業延長
10年

11年
回数延人員回数延人員
長 柄1503648116512,200m3,200m
日 吉4501804― 21,700 
水 上1954544421,71110,820 37,740 

 
 ところで、この精神は終戦後から現在まで永く町民の心にうけつがれ、道路愛護の日を設け、(14)全町一斉に作業を行っているので、作場道に至るまで砂利が投入されて、車の通行も自由になりつつあることは喜ばしいことである。
 

道路愛護作業(長柳部落)

    註
(1) 『明治文化史 生活編、開国百年記念文化事業会編』洋々社。
(2) 刑部・内藤正雄家文書。
(3) 『房総叢書、第二輯』(房総叢書刊行会)。所収「埴生郡聞見漫録」の欄外頭注に引用せられた碑文の一部は、次の如くである。

 
『安川柳渓翁の修道碑文に曰。
長南駅以南。経テ夷隅郡小土呂村ラ達ス大多喜街ニ。其間三里三十町。而在ル本郡ニ者。曰ヒ矢貫坂ト。曰つ棒坂ト。係ル長柄郡ニ者ハ。針谷坂是也。皆自リ古称ス険途ト。峻坂崩崖。猶難徒歩(中略)遂ニ以テ明治十四年某月ヲ。禀ス事ラ於官ニ。官賛シ其義挙ニ。同年四月七日。県令船越明府。率イ郡長属僚テ。親シク検シ実境ヲ。而允可ス之。於テ是ニ以テ明年八月二十日ヲ。興シ役テ。始メ干矢貫坂棒坂テ。及ブ針谷坂ニ。或ハ填ギ躬谷深田。或ハ斫リ懸崖絶壁而為ス坦途ト者。自リ直下六七丈。至ル延長二十余丈ニ。如キ矢貫針谷二坂フ。鑿ツコト隧道ヲ者。各十有五六丈ナリ。吁数千人勉励之所致ス可キ想フ也。通計役夫一万三千四百七十七人。出金三千八百八十円余。(中略)実ニ至リ十六年十二月某日ニ。告グ成ルヲ。自リ興シ役四閲シ年。而三道全シ功矣。抑此挙ハ也。郡長関氏。及ビ郡之旧族高橋氏。故白井氏。専ラ与ニ有ス力ラ焉。(下略)
 
(4) 『房総叢書、第二輯』に次の如き文がある。
 
  「小土呂坂往時は峻嶮可梯の嶮途なりしが、郡民相胥り岩石を鑿り之を凹む深さ百三十八尺長さ八百九十五間(一六二七米)歳を閲する一紀(一二年)役夫五万人を費す。時の県令船越衛曽て親しく此地を偸え左の一詩あり
  游泥坂上游泥深。雨々風々不可禁。
  却憶昊天与斯苦。一朝触我発機心。」

 
(5) 工事費は、刑部・内薬正雄家所蔵「道路修築協議費余贏金使途方法義案及び道路修築費決算書」による。
 
道路修築協議費余贏金使途方法議案(内藤正雄家文書)
予     算     額摘     要
高金弐千五百七拾六円六拾八銭四厘
 一金七百五拾九円七拾四銭五厘協議費
  金千四百五拾三円五拾四銭九厘地方税支出
  外金三百六拾三円三拾九銭地方及関連町村負担
     此   訳
  高金千七百三拾六円四拾銭五厘針ケ谷坂修築
  金五拾壱円九拾八銭六厘協議費
  外金千弐百弐拾四円四拾壱銭九厘地方税並地元関連町村負担
     内   訳
  高千四百八拾弐銭八厘是ハ長五百弐拾壱間四尺一寸道路切下ケ上置並墜道開鑿及ヒ水吐溝堀トモ人路五千弐百三十一人壱分五厘石工四百三十弐大六分人足壱人金弐拾五銭石工壱人金四拾銭宛
  金四百三拾六円六拾弐銭八厘同 上
  外金千四拾四円弐拾銭同 上
 
  高金弐拾五円五拾七銭七厘是ハ延長七拾壱間ノ処高三尺根留〓此入用杉丸太弐百拾五本並葉付竹千四百弐拾本麁朶四拾七束三分買上代杉丸太一本金七銭五厘葉付竹一本金五厘麁朶一束金四銭宛
  金七円五拾四銭一厘同 上
  外金拾八円三銭六厘同 上
 
  高金弐百三拾円是ハ道敷潰地田反別一反五畝歩畑反別一反歩山林反別三反歩買上代田一反歩金百円畑同上金五拾円山林同上金拾円ノ積リ
  金六拾七円八拾一銭七厘同 上
  外金百六拾弐円拾八銭三厘同 上
  高金五百拾八円八拾七銭綱田坂修築
  金百五拾弐円九拾九銭一厘協議費
  外金三百六拾五円八拾七銭九厘地方税並地元及関連町村負担
     内   訳
  高金百九拾六円七拾五銭是ハ長三百九拾七間弐尺道路切下ケ並上置及ヒ水吐溝堀トモ人足七百八拾七人人足一人金弐拾五銭宛
  金五拾八円一銭三厘同 上
  外金百三拾八円七拾三銭七厘同 上
  高金弐百九拾七円拾弐銭是ハ切下場所岩切石工七百四拾二人八分壱人金四拾銭宛
  金八拾七円六拾銭七厘同 上
  外金弐百九円五拾一銭三厘同 上
  高金弐拾五円是ハ道路潰地宅地反別弐畝拾五歩買上代壱反歩金百円ノ積リ
  金七円三拾七銭一厘同 上
  外金拾七円六拾弐銭九厘同 上
  高金三百弐拾壱円四拾銭九厘六地蔵村弐坂修築
  金九拾四円七拾六銭八厘協議費
  外金弐百弐拾六円六拾四銭壱厘地方税並地元及関連町村負担
     内   訳
  高金三百拾円弐拾五銭五厘是ハ長弐百拾六間三尺道路上置並切下ケ及ヒ水吐溝堀トモ人足千弐百四拾壱人弐厘人足壱人金弐拾五銭宛
  金九拾壱円四拾八銭
  外金弐百拾八円七拾七銭五厘
  高金拾壱円拾五銭四厘是ハ道敷潰地宅地反別壱畝歩買上代壱歩平均金百拾壱円五拾四銭
  金三円弐拾八銭八厘
  外金七円八拾六銭六厘

 
    説明
当長柄上埴生郡内ニ渉ル県道相当道路ノ内最モ嶮難ノ坂路五アリ曰鼠坂曰綱田坂曰針ケ谷坂曰矢貫坂曰棒坂ナリ此ノ五坂ヲ一挙開鑿ノ土功ヲ起サント欲シ昨明治十五年二月両郡各町村連合会ヲ開設シ地方税配賦金補足協議費支出割賦ノ方法ヲ議スルニ当時民間費用ノ多端ニシテ之レガ支出ニ堪ヘサルヲ以テ五坂ノ内鼠坂棒坂矢貫坂ノ三坂ヲ開鑿スルニ決シ該工事ヲ補足ノ為メ協議費金千六百弐拾五円五拾銭弐厘ヲ支出セリ以降漸次工事ニ着手シ茲ニ三坂開鑿ノ竣工ヲ得タリ然ルニ工事着手ニ当リ諸事節約ヲ加フルヲ以テ協議費金ノ内七百五拾九円七拾四銭五厘ノ余贏ヲ得タリ今之レヲ十五年度地方税配賦金千四百五拾三円五拾四銭九厘及ヒ之ニ対スル地元並関連町村負担金三百六拾三円三拾九銭トヲ合セテ金弐千五百七十六円六拾八銭四厘ノ金額ヲ得ヘシ而シテ此金額ヲ以テ残ル針ケ谷綱田ノ二坂及ヒ六地蔵村地内ノ小坂弐箇所ヲ開鑒修繕セバ、当両郡内県道相当道路ニシテ人馬通行ニ嶮難ノケ所修繕ノ功ヲ竣ヘタルモノト謂ヘシ示後年々地方税ヨリ配賦セラルル金額ヲ以テ漸次全体ノ破壊ヲ修繕シ凹凸ヲ平ケ狭隘ヲ拡ムル等ノ費用ニ充テハ三四年ヲ出スシテ人馬通行ノ困難ヲ免レ物貨運輸ノ便ヲ賭ルニ至ラン是レ五坂ノ開鑿ハ本郡ノ最モ急務トスル処ナレバ前段余贏金使用ノ目途ヲ立テ此議案ヲ発シ本会ニ附スル所以ナリ。
    道路修繕費決算
明治十五年二月長柄上埴生両郡各町村連合会ニ於テ議決シタル長柄郡味庄村山根村船木村国府里村地内鼠坂上埴生郡佐坪村市野々村地内棒坂同郡長南者茗荷沢村地内矢貫坂以上三坂ノ修築費金三千八百七拾四円三拾壱銭九厘ハ地方税配賦金千千七百九拾九円五銭三厘之レニ対スル地元及関連町村負担金四百四拾九円七拾六銭四厘ニシテ其不足ヲ補助シタル両郡各町村特別協議費ハ金千六百弐拾五円五拾銭二厘トス是レ則チ工費ノ予算ニシテ其決算ノ総計ハ金三千百拾四円五拾七銭四厘ナリ此総計ヲ以テ予算ニ対比スレバ其減少スルコト金七百五拾九円七拾四銭五厘ニシテ即チ協議費ノ余贏ナリ抑此減少セル故以ハ工事着工ニ当リ広ク職工ヲシテ入札セシメ低価ノ者ニ命シ或ハ土工ノ方法ヲ設フ地元ノ戸長其他ノ者ヲシテ精々監督セシメ専ラ費用ノ節減ヲ旨トセシヲ以テナリ然リト雖モ右三坂ノ内棒坂ノ如キハ最初隧道開鑿見込ノケ所其他質ノ適セサルヨリ悉皆切割ニ工事ノ方法ヲ変シ為ニ該坂工費ハサキノ目論見金額ニ比スレハ幾許ヲ増加セシモ幸ヒ工事着手ノ際物価ノ低落セント矢貫鼠両坂ノ費用意外ニ械省セシヲ以テナリ因テ工事其他費用ノ詳細ヲ示ス左ノ如シ
  一金三千百拾四円五拾七銭四厘     鼠坂棒坂矢貫坂三坂 修築費
   金千七百九拾九円五銭三厘          地方税
   内金四百四拾九円七拾六銭四厘        地元及関連町村負担
    金八百六拾五円七拾五銭七厘        協議費
         此訳
   金八百三拾五円四拾八銭弐厘     鼠坂 修築費
    金六百五拾五円拾八銭六厘        地方税
   内金百六拾三円七拾九銭六厘        地元及関連町村負担
    金拾六円五拾銭             協議費
       内訳
  金七百六拾七円七拾銭七厘
   是ハ道路長九百弐間壱尺(約一六四〇米)ノ間切下ケ上置添築及ヒ水吐溝堀地形並〓掻抗打トモ合人足三千二百六拾六人八分四厘但壱人金弐拾三銭五厘宛
金五拾壱円弐拾七銭五厘
 是ハ根留〓延長百九間此入用杉丸太五百九拾壱本葉付竹八百八拾本麁朶弐百四束五分買上代但杉丸太平均壱本金六銭四厘内麁朶平均壱束金五銭四厘余葉付竹壱本金六厘宛
金拾六円五拾銭
 是ハ畑反別壱畝歩道敷潰地買上代并山林藪地畑合反別壱反拾五歩土捨場損害取扱ノ分畑壱反歩金五拾円山林藪地壱反歩平均金壱円九銭五厘余
                   矢貫坂
金七百七七拾円五拾四銭九厘      修築費
 金四百六拾八円三拾銭七厘       地方税
内金百拾七円七銭七厘          地元及関連町村負担
 金百八拾五円拾六銭五厘        協議費
    内訳
金五百三拾六円拾八銭五厘
 是ハ道路長四百八十間一尺ノ間新道開鑿切割添築井水吐溝堀地形及ヒ職工手伝トモ合人足弐千百四十四人七分四厘、但一人金弐拾五銭宛
金百弐拾九円五拾三銭七厘
 是ハ隧道弐拾八間壱尺五寸岩切石工三百弐拾九人七分並隧道入口長延八間弐ケ所岩請ケ取付ケ大工弐拾三人但石工壱人金四拾銭大工壱人金三拾三銭三厘宛
金弐拾八円四十銭
 是ハ隧道入口長延八間弐ケ所岩請入用杉角四本同丸太百六十本並杉角壱本金九十銭同丸太壱本十五銭五厘
金六拾六円四拾弐銭七厘
 是ハ道敷潰地田反別四畝廿四歩畑反別壱反壱畝六歩山林反別弐畝五歩買上并田反別三畝弐拾五歩土捨場損扞取扱分但田壱反歩平均金五拾三円四拾七銭三厘内畑同上金弐拾六円四拾弐銭九厘内山林金壱円弐拾銭
                   棒坂
   金千五百八円五拾四銭三厘      修築費
    金六百七拾五円五拾六銭       地方税
    金六拾八円八拾九銭壱厘       地元及ヒ関連町村負担
    金六百六拾四円九銭二厘       協議費
       内訳
   金千弐拾九円六銭五厘
    是ハ長四拾間新道切割井水吐溝堀地形トモ人足四千三百七拾九人但壱人金弐拾三銭五厘宛
   金三百弐拾九円四拾壱銭七厘
    是ハ長百九拾五間五尺新道開鑿切割上置井水吐溝堀地形トモ合人足千四百壱人七分七厘但一人金弐拾三銭五厘宛
   金百五拾円六銭一厘
    是ハ田反別壱畝廿四歩畑反別壱反弐畝廿五歩宅地反別三畝歩墓地反別壱畝廿四歩山林反別五畝廿三歩道敷潰地買上代但田壱反歩平均金百拾八円五拾壱銭七厘内畑同上金弐拾六円弐拾壱銭壱厘余山林同上金五円宅地同上金三百円墓地同上金五円
                                                         以上
(6) 水上村役場文書、町役場所蔵、請願書の全文次の通り。
 
  郡道ヲ県道ニ編入請願書
一、市原郡明治村牛久ヨリ同内田村長生郡水上村刑部同郡日吉村豊栄村ヲ経テ同郡茂原町ニ達スル郡道ヲ県道ニ編入セラレ度キ件
右郡道ヲ県道ニ御編入被成下度此段連署ヲ以テ謹ンデ請願仕候
   理由
市原郡明治村牛久ハ県下南半ノ中枢ニ位シ上総安房二国交通ノ起点タリ、即チ旧来開通セル同所ヨリ本郡八幡町ニ至ル県道ノ外君津郡中川村ニ通ズルモノ、同高滝村ヲ経テ安房郡天津町ニ達スルモノ、同鶴舞町ヲ経テ夷隅郡大多喜町ヨリ勝浦町ニ至ルモノ等ノ路線ハ何レモ関係町村民ノ請願ニヨリ各村相前後シテ県道ニ編入セラレ是等沿道ニ於ケル関係町村民ハ共ニ此県道路線開通ノ恩恵ニ浴シ人馬ノ往復貨物ノ集散ヨリ延イテ地方人文ノ進歩産業ノ開発ニ資益スル処頗ル大ナルヲ見ル、然ルニ等シク牛久ヲ起点トスルモノノ内独リ前記路線ノミ郡道トシテ殆ンド旧態ヲ以テ存在スルハ地方人民ノ福利ヲ均霑セザルノ憾アリト同時ニ当該沿道ニ於ケル運輸交通ノ不便不備ヨリ生ズル人文産業ノ開発上蒙ル処ノ損害真ニ測リ知ル可ラザルモノアリ
抑モ前記路線ハ市原長生二郡ヲ一貫シテ東西上総ヲ縦断スルモノ其間ノ村落土地肥沃ニシテ豊饒ナル農産物ハ日夕東西ノ市場ニ搬出セラレ人馬ノ交通頻繁ヲ極メ外ハ九十九里方面ノ海産物肥料等亦タ多ク此路線ニ依リテ沿道諸村落ニ供給セラレ即チ沿道各町村民ガ交通機関ノ完備ヲ望ムモノ一日ノ故ニアラザルナリ。
茲ヲ以テ大正十年度通常県会ハ満場一致ヲ以テ当該路線ヲ県道ニ編入セラレ度キ旨議ヲ決シ親シク閣下ノ明鑑ニ許ヘテ以テ其ノ採納ヲ請ヘリ。
今ヤ郡制廃止ノ実施ノ近キニアラントシ県ノ道路ニ対スル施設方針亦タ自ラ一新セントスルニ当リ翼クハ某等切実ノ所願ヲ容認セラレ沿道人民多年ノ希望ヲ貫徹セシメラレンコトヲ茲ニ市原長生二郡関係町村ヲ代表シテ某等謹ンデ請願候也
頓首再拝
 大正十一年二月 日
 
 
市原郡明治村長三枝喜惣次
同 郡同村 郡会議員中山安行
藤代之光
同     県会議員三橋昇
同 郡内田村長宮崎菊三郎
同  内田村土木委員三橋誠作
同     郡会議員宮崎菊三郎
長生郡水上村長清田和三郎
長生郡水上村郡会議員太田弥三郎
同  日吉村長前田義造
同     郡会議員仲村玄造
同  豊栄村長城風常松
同     郡会議員大森清治
同     県会議員糸井 玄
同  茂原町郡会議長鈴木左膳
同  茂原町長   板倉慶雄

 
(7) 長柄町役場所蔵
(8) 同右
(9) 長柄村役場資料、町役場所蔵
(10) 「山口巡査殉難碑」は旧鼠坂ではなく新道の側に立っている。
(11) 「県道誉田長富線後援会発会式記念写真帳」(昭和九年四月十四日)長柄町役場所蔵
(12) 「道路愛護奨励規程」(昭和十年一月二十一日告示第二六号)による。長柄町役場所蔵。
 
   道路愛護奨励規程(昭和十年一月二十一日 吉示第二十六号)
 〔沿革〕 昭和一一年一月三一日告示第一〇三号、三九年八月一日第四一七号の三改正
道路愛護奨励規程左ノ通定ム
   道路愛護奨励規程
第一条 道路愛護ノ精神ヲ涵養シ国道府県道及市町村道ノ維持改良ヲ図ル為道路愛護会ヲ組織シ其ノ成績優良ナルモノハ本規程ニ依リ之ヲ表彰ス
第二条 道路愛護会ハ市町村又ハ其ノ一部ヲ区域トスル青年団、女子青年団、婦人会、在郷軍人分会消防組及道路愛護ヲ目的トスル団体ヲ以テ組織スルモノトス
第三条 道路愛護会ヲ組織セムトスル団体ハ左ノ各号ノ事項ヲ具シ知事ノ承認ヲ受クベシ
 一 団体名及代表者氏名並ニ会員数
 二 愛護会組織ノ概要
 三 其ノ他必要ト認ムル事項
第四条 道路愛護会ハ左ノ事項ヲ具シ作業スベキ年ノ前年十二月二十日迄ニ許可又ハ承認ヲ受クベシ
 一 作業区域
 二 作業ノ方法
第五条 道路愛護会ノ執行スベキ作業ハ常時及臨時ノ二種トシ別ニ定ムル作業要項ニ依リ常時作業ハ一年ヲ通ジテ之ヲ行ヒ臨時作業ハ非常災害時ニ於テ防備又ハ復旧作業ヲ為スモノトス
 道路愛護会ノ作業ハ暦年ニ依ル
第六条 国道府県道ノ作業上特ニ必要アリト認ムルトキハ無償ヲ以テ材料又ハ器具ヲ給与若ハ貸与スルコトアルベシ
第七条 道路愛護会ノ作業執行ニ関シテハ作業要項ニ依リ所轄土木事務所長ノ指揮監督ヲ受クベシ
第八条 土木事務所長ハ道路愛護会作業区域内ニ於ケル作業ノ成績会務ノ状況等ヲ調査シ成績優良ナリト認ムルモノニ選抜シ成績調書ヲ作製シ翌年二月十日迄ニ報告スベシ
第九条 前条ノ成績ヲ審査スル為審査会ヲ設置ス
第十条 審査会ハ会長一名、委員若干名ヲ以テ之ヲ組織ス
 会長ハ道路補修課長ヲ以テ之ニ充テ委員ハ道路補修課員中ヨリ知事之ヲ命ズ
 知事ニ於テ必要アリト認ムルトキハ前項委員ノ外道路ニ関シ学識経験ヲ有スル者ヲ委員ニ任命又ハ嘱託スルコトヲ得
第十一条 審査ハ道路ノ維持又ハ修繕ノ程度及愛護精神ノ厚薄等ニ付之ヲ行フモノトシ其ノ概目左ノ如シ
 一 当該道路愛護会作業区域内ノ道路ノ維持又ハ修繕及路上整理ノ良否
 二 費用又ハ労力ノ程度及其ノ負担方法ノ良否
 三 当該道路愛護会ノ事務ニ関スル成績ノ良否
 前項第一号ノ審査ハ当該道路ノ構造交通ノ状況及管理者ニ於テ維持又ハ修繕ヲ為シタル程度等ヲ斟酌シ其ノ作業成績ヲ考査ス
第十二条 審査ノ結果成績優良ナルモノハ之ヲ五等ニ分チ左ノ奨励金ヲ授与ス
 一等  賞金  百三十円円以内
 二等  賞金  百円以内
 三等  賞金  八十円以内
 四等  賞金  五十円以内
 五等  賞金  三十円以内
 前項以外ノモノト雖モ成績優良ナル団体ニハ特ニ褒状ヲ与フ
第十三条 道路ニ関スル篤行者アルトキハ所轄市町村長ハ其ノ事項ヲ具シ土木事務所長ヲ経テ知事ニ内申スベシ
 土木事務所長前項ノ内申ヲ受理シタルトキハ意見ヲ附シ之ヲ進達スベシ
第十四条 知事ハ前条ノ事蹟ヲ第九条ノ規定ニ依ル審査会ヲシテ審査セシメ之ヲ表彰スルコトアルベシ
第十五条 道路愛護会ハ日誌及会計簿ヲ備ヘ作業要項及費用ノ収支ヲ明瞭ナラシムベシ
第十六条 知事ニ於テ必要ト認ムルトキハ何時ニテモ前条ノ帳簿及書類ノ提示ヲ要求シ又ハ査閲スルコトアルベシ
第十七条 本規程ニ依ル国道府県道作業ノ執行ハ道路法第二十四条ノ許可又ハ承認ヲ受ケタルモノト看做ス
第十八条 道路愛護会ヨリ知事ニ提出スル書類ハ総テ所轄市町村長及土木事務所ヲ経由スベシ
   附則
本則第四条ニ依ル期日ハ昭和十年ニ限リ昭和十年二月五日トス
 (13) 昭和十年九月四日
          長生郡長柄村山根八二八番地
                   木村信太郎
  千葉県知事 石原雅二郎 殿
   道路愛護会組織承認願
 本県道路愛護会奨励規程ニ基キ左記事項ヲ具シ第五区道路愛護会ヲ組織候条御承認相成度此段及願出候也
    記
一 団体名及代表者氏名並会員数
 (1) 長生県長柄村第五区道路愛護会ト称ス
 (2) 代表者氏名 木村信太郎
 (3) 愛護会員数 百五十名
二、愛護会組織ノ概要
  別紙図面ノ通リ長柄村第五号(力丸、山根、国府里、味庄、舩木)ヲ区域トシ在郷軍人会員及青年団員ヲ以テ組織ス
三、其他必要ト認ムル事項
  愛護会ニ要スル費用ハ有志ノ寄附及村ノ補助ニ依ル
                        以上
    道路愛護会々則
第一条 本会ハ長生郡長柄村五区道路愛護会ト称ス
第二条 本会ハ長生郡長柄村大字力丸、山根、国府里、味庄舩木ノ五区青年団員及在郷軍人分会員ヲ以テ組織ス
第三条 本会ハ道路ノ愛護ヲ旨トシ第一条ノ区域内ニ於ケル県道及村道ノ維持保全並其整理ヲ目的トス
第四条 本会ニ左ノ役員ヲ置ク
 会長一名、副会長一名、評議員六名、幹事二名ヲ置ク
第五条 役員選任ノ方法任期並其職務左ノ通リ定ム
   会長ハ会員ノ互選トシテ本会ニ関スル一切ノ事務ヲ処理シ本会ヲ代表ス其任期ハ二ケ年トス
 二、副会長ハ会員ノ互選トノ会長ヲ補佐シ会長事故アルトキハ之ヲ代理ス其任期ハ二ケ年トス
 三、評議員ハ会員ノ互選トシ本会ノ事業ニ関スル議ニ参与ス其任期ハ二ケ年トス
  幹事ハ会長之ヲ嘱託シ会長ノ命ヲ受ケ会務ニ従事ス
第六条 第三条ノ目的達成ノ為ニハ本県ニ於テ定ムル作業要項ニ拠リ左記各号ノ事項ヲ遵守スルモノトス
 イ、常時作業ハ一年ヲ通シテ之ヲ行フコト
 ロ、臨時作業ハ非常災害ノ時ニ際リ防備又ハ復旧ノ為メ之ヲ行フモノトス
 ハ、作業ノ実施ハ総テ所轄土木出張所員ノ指揮ニ従フコト
 ニ、本会員ハ自ラ木石材土砂其他ノ物件ヲ道路ニ放置シ又ハ道路ヲ作業場ニ使用スル等交通ノ障害トナルヘキコトヲ為サズ且ツ之ヲ為スモノアルトキハ相当ノ注意ヲ与フルコト
第七条 本会ノ事業ニ要スル費用ハ有志ノ寄附金及奨励金又ハ村補助金ヲ以テ之ニ充ツ
第八条 本会ハ日誌及会計簿ヲ備ヘ作業ニ関スル要項及費用ノ経理ヲ記録ス
 
作業区域調書
図面・対照・符合道路ノ種類路線名区   域幅員延 長作業方法
村道力 丸
国府里線
自 大字力丸字大谷
至 大字国府里字ネギヤシキ
三米二、〇〇〇米常時及臨時
別 所
大加場線
自 大字山根字別所
至 〃 山根字内畑
三米一、二〇〇・
国府里
内 畑線
自 大字国府里字ネギヤシキ
至 大字山根字内畑
三米一、二〇〇・
上味庄
鼠 坂線
自 大字味庄字上味庄
至 〃   字鼠坂
三米二、五〇〇・
鼠 坂
内 畑線
自 大字味庄字鼠坂
至 大字山根字内畑
四米一、五〇〇・
舩 木
内 畑線
自 大字舩木字八反目
至 山根山根字内畑
三米二、五〇〇・
道脇寺
内 畑線
自 大字山根字道脇寺
至 〃   字内畑
四米一、五〇〇・

 
 昭和十年九月四日
          長生郡長柄村第五区道路愛護会
                代表者 木村信太郎
  千葉県知事 石原雅二郎 殿
   道路愛護会作業区域並方法許可願
 本会ハ昭和十一年ニ於テ執行スヘキ作業区域及方法左記ノ通リ有候之条御許可相成度此段及願出候也
    記
一、作業ノ区域
 長生郡長柄村第五区内県道及村道ヲ以テシ別紙調書ノ通リトス
一、作業ノ方法
 所轄ノ土木出張所員ノ指揮ニ従ヒ村土木委員ト連携シ県ニ於テ定ムル作業要項ニ則リ左記ニ依リ執行セムトス
一、常時作業又ハ臨時作業ノ区別
    常時及臨時
一、一ケ年ニ於ケル作業実施ノ予定日時
 三月二十一日、五月一日、八月一日、九月二十一日
  自 午前八時
  至 午後四時
 尚災害其他ノ必要ニ於テ臨時作業ヲ行フ
一、材料及器具ノ供給方法
 材料及器具ハ村及各自ノ負担トスルモ特種ノ器具材料ハ村ヨリ補給ヲ受クルモノトス
一、経費ノ収支方法
 本会ニ要スル経費ハ寄附金奨励金又ハ会員ノ負担ヲ以テ之ニ充テ器具ノ購入其他必要ナル雑費等ニ支弁スルモノニシテ為ニ会計簿ヲ備ヘ其収支ヲ記録ス
 (14) 長柄町道路愛護奨励規程
              (昭和三十八年七月十日 訓令第四号)
第一条 道路愛護の精神をかん養し町道の維持改良を図る為道路愛護会を組織しその成績優良なものは之を表彰する。
第二条 道路愛護会は部落単位に組織するものとする。
第三条 道路愛護会を組織する部落は次の各号の事項を記載し町長に提出するものとする。
 一 部落名及び代表者氏名並びに会員数
 二 愛護会組織の概要
 三 その他必要と認める事項
第四条 道路愛護会は左の事項を記載し、作業すべき日の十日前までに町長に提出するものとする。
 一 作業区域
 二 作業の方法
第五条 道路愛護会の行なう作業は定期と臨時の二種類とし別に定める作業要項により定期作業は一年を通じ二回、臨時作業は非常災害時において防備、又は復旧作業を行なうものとする。
 道路愛護会の作業は歴年によるものとする。
第六条 町道の作業上特に必要があると認めるときは無償を以て材料又は器具を貸与するものとする。
第七条 道路愛護会の作業執行に関しては作業要項により町長の指揮監督を受けるものとする。
第八条 建設課長は道路愛護会作業区域内に於ける作業の成績会務の状況等を調査し成績優良なものと認めるものを選抜し成績調書を作成し翌年二月十日までに町長に報告するものとする。
第九条 前条の成績を審査するため、審査会を設置する。
第十条 審査会は委員若干名を以て組織し町長が任命する。
第十一条 審査は道路の維持又は修繕の程度及び愛護精神の厚薄等について行なうものとし、その概目は次のとおりである。
 一 当該道路愛護会作業区域内の維持又は修繕及び路上整理の良否
 二 費用又は労力の程度、及びその負担方法の良否
   前項第一号の審査は当該道路の構造、交通の状況及び管理者に於て維持又は修繕を為したる程度等をさんしゃくしその作業成績を考査する。
第十二条 審査の結果成績優良なものは之を五等に分けて次の奨励金を交付する。
 一等  二〇、〇〇〇円
 二等  一〇、〇〇〇円
 三等   七、〇〇〇円
 四等   五、〇〇〇円
 五等   三、〇〇〇円
第十三条 道路に関する篤行者があるときは部落道路愛護会の責任者はその事項を具し町長に内申するものとする。
第十四条 町長は前条の事績を第九条の規定による審査会の審査に附し表彰するものとする。
   附則
 この規程は公布の日から施行する。
    道路愛護奨励規程による作業要項
第一 路面の修繕は左の各号によること。
 一 路面の凹凸は之を削り均すこと。
 二 路面に大なる凹所又は洗掘を生じたときは砂利又は砂を補足し馴染よく適度の蒲ぼこ形に仕上げること。
 三 路面の車輪掘れは両側に余れる砂利又は補足砂利を持ち込み高低なく掻き均すこと。車輪掘れの深さ大なるときは栗石又は荒砂利を持ち込みその上に目潰し砂利を用い掻き均すこと。
  但し路床軟弱な土質なときはその部分を除がいした後上記の作業を為すこと。
 四 路面に突出する玉石、栗石、木根等は之を除き砂利、砂及び真土をもって跡埋を為すこと。
 五 橋梁、溝橋、暗渠の前後路面は従断勾配を緩ならしめ諸車通行に衝動を与えない様注意すること。
 六 路面に崩土を生じたときは、交通に支障のない箇所に捨て原形に回復すること。
 七 雑草、木根等の混入する土砂又は側溝の浚渫、泥土等を路面に搬出しないよう注意すること。
第二 排水の手入れは左記各号によること。
 一 橋梁、側溝、暗渠、土管等に漂流物、泥土、雑草、落葉、その他の障害物が入り込み排水不良な箇所は、充分掘り浚い障害物は除去し、通水に支障のないようすること。
 二 路面の排水を良好にするため、路面は常に適当な弧形に附すこと。
 三 降雨の際に於てはなるべく区域内の道路を巡視し水溜りその他の排水不良の箇所に対し適当に排水の方法を講ずること。
第三 道路の整理は左の各号によること。
 一 木石材土砂その他物件を道路に放置し若しくは道路作業場又は物干場に使用する等交通の妨害となる行為をさせない様注意すること。家屋密集地に於ては商品、広告品等を道路に並べない様注意すること。
 二 路面に転在する玉石、栗石、その他交通の障害となるものは除去すること。
 三 路肩に繁茂する雑草は耳芝のみを存置し之を削取り実用路面を有効ならしめかつ、排水を便にし尚路面の塵埃泥土雑草等は除去し常に清潔を保持すること。
 四 冬季に於ては路面及び橋面の積雪並びに結氷の除却をなすこと。
 五 路面の乾燥を来したときは、適度の撒水をなすこと。
 六 道路の保持若しくは交通の障害となるべき竹木は適当な枝打ち又は伐採に注意すること。
 七 車、馬避譲のため待避所を利用させる様指導すること。
 八 並木道路標識保持に注意すること。
第四 非常時に於ては左の事項に注意すること。
 一 出水の場合は漂流物に注意し橋梁の危害予防上必要な措置を講ずること。
 二 出水時に於て道路、橋梁等破壊の虞ある場合は関係吏員の指揮に従い防備に努めること。
 三 交通遮絶の箇所を生じたときは適当な方法をもって町長に速報すること。
第五 前各号の外町長の指揮監督を受け、道路、橋梁、側溝暗渠等の維持保全上必要な作業をなすこと。