長南町長南、野村屋旅館が、古くからの富山の売薬人の宿となっているので、五五年一〇月の或日、この旅館に、売薬人を訪ねたら、戦後の売薬の仕組をくわしく話して頂いた。それは、菅原寛、村瀬政信、深川健之輔、中谷清次郎さんら四人の方々で、戦後は、家庭薬配置員と呼んでいるとのこと。まずこの四人の談話を述べると、菅原寛氏は、広貫堂の販売員で、二〇歳頃から現在まで二〇年間長柄方面に来ている。日吉五〇、水上五〇、長柄二〇戸位の懸場をもっているが、販売方法は三百年の昔と変らず配置売薬の仕方である。氏は、その外茂原、大多喜土気、誉田、千葉市内、辰巳、大宮団地にも懸場があるという。この配置員は、千葉県全体で約九百人いるので、この人達で配置家庭薬協議会を組織し、それを八支部に分けている。長生、夷隅、山武を上総支部と呼び、氏はその副支部長で、支部員は七〇名に達するという。
村瀬政信氏は、第一薬品工業、村瀬薬房の販売人、公務員を辞め、昭和二六年より長柄町を巡回する。水上、日吉、長柄の外、市原や夷隅にも懸場をもっている。
深川健之輔氏は、五〇年間この仕事をやっているが、千葉県に来たのは昭和二一年以降。親は明治一〇年生れで、やはり売薬人をやっていて本県にも来たが、京都、新潟、滋賀県へもいっている。飯倉製薬会社の売人。富山県には、製薬会社が六〇社あるという。昔は、反魂丹を手形の代りに持歩いたという。
中谷清次郎氏によると、配置員になるには、一か月の薬事講習をうけ試験に合格することが必要。そして販売しようとする県の認可をうけなければならない。
次に、千葉県配置家庭薬協議会々則の一部を示しておく(全文は七章二五条)
千葉県配置家庭薬協議会々則
第一章 総則
第一条 本会は千葉県配置家庭薬協議会と称し事務所を千葉県内に置く。是を本部と称す。
第二条 本会は左記七ケ所に支部を置き支部事務所を支部適当地に置く。
一、千葉支部(千葉市、船橋市、習志野市、千葉郡)
二、東葛支部(市川市、松戸市、柏市、野田市、東葛飾郡)
三、印旗支部(成田市、佐倉市、印旛郡)
四、香取支部(佐原市、香取郡)
五、海匝支部(銚子市、旭市、八日市場市、海上郡、匝瑳郡)
六、上総支部(東金市、茂原市、山武郡、長生郡、夷隅郡)
七、房総支部(館山市、木更津市、安房郡、君津郡)
八 市原支部
第三条 本会は千葉県内において家庭薬の配置販売を業とするもの、およびその使用する配置員を以て組織する。
第四条 本会は会員相互の親睦を計り配置家庭薬業の刷新向上を期するを以て目的とする。
第二章 事業
第五条 本会は前条の目的を達成するため左の事業を行う。
一、道義の昂揚
二、事業に関する指導
三、薬事に関する研究
四、営業上の協定
五、事業の粛正並びに監視
六、優良配置員の表彰
七、其の他目的達成に必要なる事項
第六条 第二条の該当者であって本会に入会せんとする者は配置区域および商号を届出づるものとする。
第七条 会員は左の場合会長に届でて退会することが出来る。
一、事業を廃止したとき
二、死亡したとき
三、止むを得ざる事由の生じたるとき
(以下略) 昭和五三年、全国の配置員は約五千九百人。昭和二〇年には一万五千に近かったという。
第一章 総則
第一条 本会は千葉県配置家庭薬協議会と称し事務所を千葉県内に置く。是を本部と称す。
第二条 本会は左記七ケ所に支部を置き支部事務所を支部適当地に置く。
一、千葉支部(千葉市、船橋市、習志野市、千葉郡)
二、東葛支部(市川市、松戸市、柏市、野田市、東葛飾郡)
三、印旗支部(成田市、佐倉市、印旛郡)
四、香取支部(佐原市、香取郡)
五、海匝支部(銚子市、旭市、八日市場市、海上郡、匝瑳郡)
六、上総支部(東金市、茂原市、山武郡、長生郡、夷隅郡)
七、房総支部(館山市、木更津市、安房郡、君津郡)
八 市原支部
第三条 本会は千葉県内において家庭薬の配置販売を業とするもの、およびその使用する配置員を以て組織する。
第四条 本会は会員相互の親睦を計り配置家庭薬業の刷新向上を期するを以て目的とする。
第二章 事業
第五条 本会は前条の目的を達成するため左の事業を行う。
一、道義の昂揚
二、事業に関する指導
三、薬事に関する研究
四、営業上の協定
五、事業の粛正並びに監視
六、優良配置員の表彰
七、其の他目的達成に必要なる事項
第六条 第二条の該当者であって本会に入会せんとする者は配置区域および商号を届出づるものとする。
第七条 会員は左の場合会長に届でて退会することが出来る。
一、事業を廃止したとき
二、死亡したとき
三、止むを得ざる事由の生じたるとき
(以下略) 昭和五三年、全国の配置員は約五千九百人。昭和二〇年には一万五千に近かったという。
さて、富山県と言えば、本県からはるか西北の地である。現在の時代はとも角、汽車の便もない幕末から明治の時代には、売薬人は足に頼るしかない。そして、科学の進んだ今日でもこの薬を愛用している家庭が多いということは、誠に驚歎に値すると言えるであろう。