どんな薬屋からとっているか

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その実態をまとめたのが次頁の表である。この表をまとめるには全く手を焼いた。それは、近隣の店なのか、富山の配置薬なのか判断に苦しむものが多かった。例えば、広貫堂の場合、やま一、∧一、菅原寛などとあり、配置員の名をあげたり、製薬会社の名をかいたり、富山のくすり、富山のみとしたりといった状態である。そこで、大体同じものはなるべく薬局名をあげたが、多少誤りがあると思われる。この表で、左側は、大部分富山のもの、右三つが奈良、その下にあげたのは近隣のもの、其の他は判断に苦しむものを合した数である。最近は、一般の薬局で、家庭常備薬だとか、急救箱だとかいう名で売られているので、それを備える家庭が多くなってきたことがわかる。
 
表13 とっている薬屋の調査(回答者数)
名まえ長柄日吉水上名まえ長柄日吉水上
広貫堂〓15910虎印奈良御所市422
村瀬薬房12510増田薬品(西脇)431
村上薬品111タイ印米田昇42
ミ五分閣大薬房14810
マ前野義彦64市原薬品76
ハすもう,ちょっきり211マルフク101
高市製薬523備前屋311
ムヒ本舗11深谷薬局12
成田薬局1024その他101515
田村薬品841266162

 
 この表にみえる奈良の薬うり米田昇さんについてふれてみよう。米田昇さんは、奈良県高取町豊島製薬の売薬人である。氏の談によれば、奈良の薬は、大正一二年の震災後から長柄方面に入っているが、当時は二、三〇戸にすぎなかった。
 その後、戦争の為、昭和一六―二四年間中止し、二五年頃から始め現在は四百戸に及んでいる。薬の目玉商品は、沢市目薬だった。父も売薬人で自分は二代目、もう五〇歳を過ぎたので息子に後継ぎをさせようとしたがダメ。理由は何かと言えば、配置員(売薬人)は、千葉だけでなく、山形や和歌山を回るので、一年の三分の二、七、八か月は家を留守にする。そのため嫁に来る人がないからだとのこと。売薬業者の前途もきびしいものがあるようである。