長柄ダムの目的

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「利根の流れを長柄にひいて、町のあしたを開くグム」と、長柄音頭に唄われている長柄ダムとは、一体どのようなものであろうか。それから記すことにしよう。
 言う迄もなくこのダムは、長柄、犬成地区の谷間を堰留め、利根川の水を引いてきて貯水しようとするもので、その規模は表1に示した通りである。
 
表1 長柄ダム
総貯求量10,000,000m2
有効貯水量9,600,000m2
常時満水位EL. 57.1m
型 式アースダム
堤 高52.0m
堤頂長250m
副ダム790m
堤体積3,020,000m2

 
 

長柄ダム工事現場(昭56.1)

 昭和四八年に着工され、昭和六〇年度の完成をめざしている。さて、このダムは、何のために造られるのであろうか。それには、導水計画にふれねばならない。利根川から、ここまで導入された水は、表2に示すように、水道用水として、千葉、君津地区に毎秒〇・四m3、九十九里沿岸地区に毎秒一m3、工業給水として京葉臨海南部工業地域に毎秒七t、合計八・四m3の水を用水することになる。しかし、常時この水量を供給する為には、利根川から取入れた水を一時貯水し、必要に応じて導水できるような、導水調整のためのダムを必要とする。これが長柄ダムと東金ダムである。東金ダムは表3のような規模で、長柄ダムの約三分の一の大きさである。さてこの二つのダムによって、どのような調整を行うかといえば、
(1) 非かんがい期(九月一日―二月二八日)
 利根川水系の上流ダム群に依存する量を合わせ、最大毎秒一三・三m3の水を取水し、東金及び長柄ダムに導水調整して、水道及工業用水、毎秒八・四m3を供給する。

(2) かん漑期(三月一日―八月三一日)
 (イ) 供給する毎秒八・四m3のうち、毎秒三m3は、両総用水施設の拡張により常時取水を行う。
 (ロ) 両総用水の必要水量日産九三八千m3を供給した後の余裕を利用し、日産三一二千m3の範囲内で利根川から取水し、東金ダム等で調整、毎秒三・六m3の用水を確保する。
 (ハ) 準備期間(三月一日―三月一〇日)を除いて、降雨等により両総用水が利根川から取水を必要としない期間には、毎秒最大一三・三m3を利根川から取水し、①②の用水を確保した後の毎秒最大六・七m3を長柄ダム及び東金ダムに導水調整し、毎秒約一・八m3の用水を確保する。

 
表2
区分供給地域1日平均給水量1日平均取水量(1m2=1t)



千葉市から君津市に至る地域33,300m335,000m30.4m3/S
九十九里沿岸地域
 八日市場地区
 東金地区
 茂原地区
82,300 85,630 1.0



京葉臨海南部地域560,000 604,800 7.0
675,600 725,430 8.4

 
 
表3 東金ダム
総貯水量2,300,000m3
有効貯水量2,200,000m3
常時満水位EL. 43.8m
型 式アースダム
堤 高28.8m
堤頂長241.5m
堤体積約474,000m3

 
 
東金揚水機場
揚水量1.0m3/S
機 種渦巻ポンプ
φ600m/m1台

 
 さて、それならば、利根川から長柄ダムまで、どんな方法で導水されるのであろうか。それが、房総導水路事業計画である。