田代の山崩れで泉水、杉本両家倒壊死者四名、負傷者多数を出している。七月二九日、朝から豪雨が続き夜になっても止まず、夜中に泉水豊吉の裏山が崩れ落ち住家を潰したが幸にして死傷者は無かった。
翌三〇日部落の人々が後片付けに来て隣家の杉本嘉重郎宅で昼食中、突然山崩れが杉本家を襲い、住家が倒壊して、嘉重郎の長女きく(7歳)と豊吉の次男金次郎(35歳)の二人が即死した。尚ほ豊吉(65歳)と長男猪重郎(39歳)共に重傷を負い、猪重郎は八月五日に死亡、豊吉は病院に運ばれ八月七日死亡した。斯くして泉水豊吉家は住宅が潰れ、本人、長男、次男の死者三名。杉本嘉重郎家は住宅が潰れ、長女が死亡。両家で計四名の死者を出した。此の上部落の手伝人にも負傷者多数の惨状を呈した。
また同じ豪雨のため刑部の三沢にある雲頂院も土砂に埋没、死者四名を出した。すなわち七月三〇日午前三時頃豪雨に因り裏山が崩れ土砂で本堂が倒壊埋没した。檀家十二戸が主体となり刑部区の非常連(消防団員)総出動、其の他多勢で掘り起こした処、住職古川元諦、同妻フジ、同居者鈴木忠吉、同江川とりの計四名が死体となって発見され雲頂院は全滅の惨状を呈した。