二 近世文芸に見えたる長柄 2 Nagaramachi as seen in literature and art

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 房総半島は近世の政治・経済その他の中心であった江戸に近いため、多くの文学者が訪れ、またすぐれた作家も輩出しており、記録せられた作品も多く、例えば三回にわたり刊行せられた『房総叢書』などにもすでに翻刻出版せられた多くの文献を数えることが出来るが、この長柄の地は海岸の風光絶佳の地から離れて、ほぼ半島の中心部にあり、小封分立のため政治の中心とはならず、また主要交通路からも離れた故でもあろうか、この地を描いた文学作品はほとんど従来紹介せられていない。しかしこまかく文学作品を辿って見ると、絶無とは言い難く、そのいくつかを拾い上げることが出来よう。管見の及んだ限りをここで採り上げて見たい。