この銀杏会主催のものとして注目せられたものは昭和二六年(一九五一)一月一七日に日吉中学校で開催した洋画名作展であった。まだ東京はもちろん千葉県においても、世情が混沌としていて美術などに関心のなかった時代であっただけに、近隣の町村からの学生生徒をはじめ千名をこえる多数の参観者があった。第一室には高橋竜氏(榎本当時農業組合長)所蔵の二三点で川村清雄・黒田清輝・青木繁・村山槐多・中村つね・前田寛治・小出樽重・岡田三郎助・藤島武二・安井曽太郎・梅原竜三郎・坂本繁二郎およびミレーの素描が展示され、第二室には仲村多治見氏所蔵を主として、今関啓司・山崎省三・今関鷲人の作品二〇点が陳列せられた。その後、高橋竜氏は故人となられ、その蒐集も残念ではあるが散佚した。しかし終戦後間もない混乱の時期の文化活動として、また当時これだけの一流の作品がこの地にあったということは記憶すべきであろう。