遠山家年中行事

104 ~ 108 / 922ページ
領主及び家臣たちのかかわりの年間の行事には、どんなことがあったか「遠山家年中行事藩并下々迠掟其外雑書荒増」(明治一六年新田淳書)によってみることにする。この記録が明治に入ってからのものなので、その記述内容は、幕末に近くしかも正確度においては稍(やや)不安もあるが、そのまま紹介することにする。藩士、家臣の立ち入った生活までは把握できないが、どんな行事が行われていたかは概要をつかむことが出来る。
 
遠山家年事行事
正月元日六ツ時(六時)諸士幷足軽・中間出仕する。
家老・用人・御用人・医師年頭祝一人ずつ申上 盃下される。
武頭始諸士一統一人一人でお祝申上げ そののち御流・雑煮を頂戴。
足軽以下御礼 支配頭へ申上げのち雑煮を頂戴。
下書役・下料理人お役通りかかりお目見、年頭のお祝を申上げる。
大工棟梁・町年寄・幷出府町人台所で年頭のお祝を申し上げる。
伊勢神宮へ代参のため扈従一人出立する。
二日雲林寺 佛好寺へ佛参り。
三日給人・中小姓・徒士の部屋住出仕、年頭のお祝申上げる。
六ツ時(夕方六時)諸士一統出仕、謡初め 鯨吸物と酒が出る。
五ヶ坂下、蛭川村々の庄屋・組頭・披官・長百姓・神明神社可知若狭正 台所で年頭のお祝い 書院で蛤の吸物と酒が出る。
四日南方中通村々 三日と同じ。
寺方(雲林寺・龍王院・彿好寺・正岳院・天王院・福壽院)書院で年頭お祝い申上げる。
五日北方村々右同様。
七日五ツ時(八時)揃って日々お礼に諸士、足軽以下出仕する。
九日村々寺方 書院で年頭のお祝を申上げる。
一一日四ツ時(一〇時)諸士一統足軽迠出仕し、具足の祝餅下される。
役替始あり。
伊勢代参下向、お目見有り、年頭のお祝のち御流・雑煮を下される。
一三日寄合日始 家老・用人・諸役人出仕する。
一五日五ツ半時(九時)上元のお礼に諸士、足軽以下出仕する。
一六日七ツ時(午前四時)城中で大般若経祈禱 龍王院・三井寺[坂下町]・雲台寺[福岡町]が出仕し、書院で転読。
結願には重役も一人相詰、終了後即刻お供つれ、神明宮・八幡宮・龍王権現・古龍王八幡宮へ社参し、帰城後本丸天守に入られることもある。
一九日友政公の忌日(命日)簡単なお供で雲林寺へ佛参り。(この後も代々の忌日に佛参りがあるが省略する。)
中旬江戸表より年頭の初使着く。諸士一統出仕。
二月四日諸士始足軽以下下々まで知行切米春取替の手形 金奉行より渡され調印の上代官へ差出す。
八日諸士部屋住勤 切符金の者・春取替金、金奉行から渡る。
三月三日五ツ時(八時)揃って上巳(じょうし(み))のお礼に諸士並に足軽以下出仕。
中旬頃在城の際は参勤が近づいているので、神明宮・八幡宮・龍王権現・古龍王八幡宮へ供をつれ社参り。
二五日参勤江戸表へ発駕。但木曽川出水で渡舟出ないときは、日延べとなり、渡舟出来次第仰出られる。諸士幷足軽は上地渡舟場迠見立に出る。
四月江戸表よりお使い着く、道中の無事、参勤のお礼首尾よかったこと、諸士一統出仕しお喜びを申上げる。
五月五日五ツ時(八時)揃って端午のお祝 諸士幷足軽以下出仕。
五月上旬頃江戸表よりお城着きの日
一六日七ツ時(午前四時)より城中、大般若祈禱有り、正月一六日の通。
六月土用諸士一統出仕 お機嫌伺い。
七月七日(入三日目)五ツ時(八時)揃 七夕のお礼 諸士幷足軽以下出仕。
一四日在城の節は雲林寺、佛好寺へ佛参り。
一五日中元の御礼 盆中につきなし。
八月朔日五ツ時 揃八朔のお礼 諸士幷足軽以下出仕。
二八日龍王権現祭礼に社参り。
九月九日五ツ時、重陽のお礼 諸士幷足軽以下出仕。
一六日今暁七ツ時(午前四時)城中で大般若祈禱 正月十六日の通り。
十月上亥の日玄猪のお祝い、夕六ツ時(午後六時)揃にて諸士一統出仕お祝い餅、手目下される。
一一月四日今日諸士始足軽以下まで知行・切米・冬渡之手形金奉行より相渡る。調印の上代官へ差出す。
八月頃より一一月頃迠朱印蔵にある代々の朱印幷宝物、刀剣の類、奉書等虫干し 重役衆、勝手方は出仕する。
一一月二九日村々より貢納米、代金納の相場は近辺の米直段の相場平均で諸役人立会の上、直段相場がきまる。
一一月中旬頃年々領内貢納米、其外臨時金、諸運上金等幷在・江戸入用金拂高差別諸士幷足軽以下知行、切米、切符金、年内人数増減一紙に結び勘定仕立帳御在城之節御一覧有之。
一一月中旬諸役所貢米・金銀諸品出入勘定相改始ル 相済一紙勘定調ニ取懸り年内中ニ出来ス。
一二月八日江戸勤番部屋住勤の者、切符金 金奉行より渡される。江戸定府幷切米取にて勤番の者へ追々代官より渡され、お歳暮使に差下す。
一三日煤はらいで、日比野村より人足が出され、台所を始め、その他煤はらいがある。また瀬戸村より、正月松飾りの松人足が、城へ持運び、松杭等つくり用達をする。
正月の年男、重役の内一人仰づけられる。
一五日江戸表へお歳暮使出立 江戸表の冬の仕拂金幷荷物等差下される。