幕藩支配機構の基礎単位は村であり、その村の長(おさ)が庄屋である。代官の支配のもとに村の勧農、治安維持、農民統率にあたるわけであるが、主たる任務は年貢収納であった。
庄屋はどのようにして決められたか、前述の「飯妻村法之事」にみられるように、長百姓、頭百姓の家筋の者のみが勤めえたが、その方法は父子の世襲、数氏による二-三年の輪番、入札などがみられ各村によって異なっている。しかし領主任命の形はどの村も同じである。
手金野村
小助
其方儀今般庄屋本役被 仰付給米親代之通被下置候 諸事入念相勤候様被 仰出候
右之趣御家老衆被申聞候
(文久元年)酉 十一月
これは知行主任命の形式を示す一例である。庄屋の主たる任務は年貢収納であるが、これは村請け(村の連帯責任)の形であり、その総責任者が庄屋であるというわけだから、村民の全生活にわたって、統率していかなければこの責任は達成できない大変な仕事である。庄屋の勤務のありさまについては、後に述べることにして、ここでは岩村領内の場合にあげた庄屋の任務条項をみてみる。