苗木領内の村

209 ~ 211 / 922ページ
 (1) 長百姓 中津川市に関係あるのは、日比野、上地、瀬戸の三か村で庄屋でいえば日比野村二名、それに町年寄、組頭があった。他は一名であり、上地には城奉公の人が多かったとされるし、瀬戸の庄屋は苗木城奪還の功もあって別格だったなどという。苗木領全体でいえば小村で庄屋が数か村兼帯の場合もあったと考えられる。村役人にしぼって特色をあげれば「長百姓」である。
 普通村方三役といえば庄屋、組頭、百姓代だが、この百姓代がいないこと、そして長百姓があることである。福岡村にはこの長百姓が六名もいたが、他の二八か村には一名もなく、この長百姓というのは前述の「飯妻村法之事」にあるように村の有力者で、その家柄に対する一種の称号のようなもので百姓代とは考えられない。
 (2) 披官・鷹巣 この外に苗木領の特色として披官、鷹巣がある。被官は村役人というよりむしろ家臣に近いもので、平常は農村に居住して農業を営み、参勤交替あるいは勤番などの場合には臨時に雇傭するのでなく、常時この身分の者(家臣といっても足軽、中間的)を農村に住まわせたというものであろう。
 鷹巣は遠山家から幕府への献上品である鷹巣を世話する、いってみれば山廻りの村役人で、組頭より前に署名している文書を多くみる。
 (3) 庄屋の勤務 苗木領の庄屋の勤務の例は「中野方町史」にくわしい。その中より「庄屋勤役留」を転記する。
 
一 庄屋勤役留
 一 年頭村方年礼 一 御城ヘ年頭祝儀(正月二日) 一 村中総寄合(法度、村定、惣請印=正月十一日) 一 御倹約定書(一位総代二人宛請印)
 一 諸願差上(職人承認鑑札 縁組願 井水川除、桶普請 田地売買願書 家普譜及修理 持木売払 鉄砲改 判譲り判替 名替り願 新家株願 追放者御赦免願書 庄屋他行願書 庄屋吉凶御届 帳はづれ帳入願書 借用米書付提出御城金拝借手形差出し 一 田の植付督励 植仕舞届 一 火事御吟味の上届出 一 新田 畑田直し検分、村役人内見届出、(盆後八月彼岸頃迠ニ)一 上納金勘定(十一月より取集)
 一 家中様奉行人(代官割賦により十二月上旬は限ニ届出) 一 順礼往来願書、一 道路つくり(家並割付年内三度宛出ル享和九年定) 一 宗門改(証文印鑑認メ御内見に入れる、本百姓を召集、諸事行儀、諸役申渡す 他所寺院来村奥書証文差出す 御改当日の行事)
 一 田畑廻り (組頭、五人組頭引つれ年三度宛見廻り)
 一 村負担勘定(村入用総勘定 総百姓印形致シ 二月中御代官様ニ差上)
 ○諸事割過銭 ○宗門入用帳 ○上納真綿代金 ○上納紙代金 ○奉公人増金割方 ○下男増金割方 ○御国役御割賦掛り銀 ○御普請人足弁銀 ○上納葺板代 ○燈松代金 ○定法小物成割 ○助伝馬銭 ○諸神事掛り入用 ○祭り入用掛り銀 ○定夫給米 ○御膳米並米割方 ○御家中渡し小物成 ○わらび、ぜんまい、鳥げ、わら(六月中御台所へ差上、無償) 柿渋(七月中差上) 鉄砲一梃ニ付(年貢四合六勺御用雉子二つがい冬中に差上)井水、川除見分出役人の人足及用水
 一 殿様 御発駕及御城御着の恐悦申上
 組頭 被官 長百姓 御台所へ罷出(発駕) 献上物扇子一箱宛(御着)
 一 村役(夫役=無給)
 宗門中勘定 苗木行夫役 小歩行役 御蔵番 御立山番 神事役 村方故障の節番人 組役、寺役 庄屋手間 組頭手間番人 組役 寺役 庄屋手間、組頭手間(去年より廃止)寺葺替手間
 一 苗木藩村庄屋勤役留及村々年中行事
 一 高札