農工商など一般庶民の守るべき事項を五人組を通して徹底をはかったのであるが、これを目的とする文書に「五人組仕置帳」がある。市内ではないが、下野村(福岡町・古田家文書)に天明三年から天保七年のものが、また藤村(恵那市史)に寛政四年から文政一二年のものが残されている。これによると七〇項目に近い厳守事項を前者は、正月、五月、九月、一一月の年四回、後者は正月、四月、七月、一〇月の年四回、大中小の惣百姓を集めてよみ聞かせることにしている。
この厳守事項は両者ではやゝ異なるが要旨だけをあげると次のようである。
一 公儀御法度を堅く守ること。一 御制法の儀厳守のこと。一 五人組内悪しきこと油断なく検議すること。一 毎年宗門改帳三月の内にせよ。一 宗門帳押し印と別印をつくってはならない。一 切支丹ころびの者は別帳をつくって差出すこと。一 田畑山林など永代売買してはならない。一 借り田畑は地主より年貢をだすこと。一 すべて家業第一につとめよ。一 猟師の外、鳥獣をとってはいけない。一 捨牛馬をしないこと。一 牛馬の売買は出所をたしかめ、請人をとること。一 新地の寺社をたてることはかたく停止である。一 盗賊悪党を訴えるとほうびを出すこと。一 庄屋、惣百姓とも身分にあわない家作をしてはならない。一 百姓衣服について 庄屋は絹、紬(つむぎ)木綿(妻子とも)平百姓は布木綿以外はきてはならない。一 聟(むこ)取り、嫁取りの祝いは分限よりかるくやること。一 捨子をするな。一 生類をあわれめ。一 寺社住持、社人替りは注進せよ。一 神仏開帳は役所へとどけよ。一 常々吟味して、うさんのものを村におくな。一 立退き、ちくでん、潰(つぶ)れは注進すること。他からのそうした者をおいてはいけない。一 他村から村へ入ったものは庄屋の証文をとること。一 百姓田畑の子孫わけ高一〇石、地面一町より少ないものはしてはならない。一 操り(人形)、見せ物の類、芝居をやってはいけない。一 遊女を村内におくな。一 行方知らずのものを一夜もとめるな。一 往来にて患らっている者は医師にみせよ。もし病死したら村役人立合でしらべ指図をうけよ。一 殺害人、自害人は番人をつけて早速とどけること。一 村内のけんか、庄屋、年寄立合吟味せよ。一 伝馬人足はよく吟味して滞りのないようにせよ。一 御用人馬は滞りなく出せ。一 道つくり、火の用心は入念にせよ。一 堤、川除はよく見廻ること。一 大水、盗人狼藉、火事のときは、一五歳以上六〇歳以下の男は残らず出て指図をうけること。一 道橋の損は早くなおすこと。一 鉄砲は運上を出した猟師のみであること。一 御林、御立山の竹木を伐採してはならない。一 入会の野山でも草木の根をとってはいけない。一 諸作第一(耕作第一)。一 耕作をおこたっている者あれば訴え出よ。一 由緒のないものは苗字帯刀はいけない。一 山や浦を荒してはいけない。一 ばくち、かけごとはいけない。一 百姓は長脇差をするな。一 他所ものを二日以上とめるな。一 年貢皆済前に他所へうるな。一 御城米はよく吟味して俵こしらえもよくやれ。一 年貢金納入には一つ一つ扣帳に書付け印をおすこと。一 御年貢米は納入の時、手形をつかわし庭帳にしっかり書くこと。一 すべて公儀よりくださる人足、扶持賃は当座に銘々に渡すこと。一 年貢免定は村中残らず被見すること。一 免定をみたら被見の一札を連印で正月十日までにとること。一 公用にて庄屋方に寄合うとき食物酒は一切ださないこと。一 堤川除普請申渡の時、村用掛の酒を出さないこと。一 すべて酒肴などは軽くしてなるべくひかえること。一 押売り押買いなどは何にてもよくない。一 手代の印形のない書類は無効である。一 手代廻村の時、定めの銭にすること。一 村入用はよく吟味してすくなくおさえること。一 鷹方はしっかりつとめること。一 取退無尽は停止のこと。一 追放者を隠しておかぬこと。
このように庶民の守るべき事項を五人組をとおして徹底をはかった(中津川宿村「毎年申渡」は中巻別編にあり)。