神坂の島田文書には、検地仕様の次に、検地実施規則ともいうべき検地掟覚二一か条の写しがある。年月日の記入はないが、尾張領勘定所通達であることは確かなものである。
検地掟覚
一 検地之儀百姓之身上定 生死之根本ニ候間 高下無之様ニ成極念を入吟味可有之事
一 郷中ニ在之分も先規ゟ(より)寺社縄除収納仕来候仰出無紛者 名主惣百姓方ゟ証文を取 訴えの如く引可被申事
一 不及申儀候得共 間違 帳之違并落地無之様ニ可入念事 但間違之由百姓訴訟申候へハ再縄入可申事
一 他領之儀者不申及隣郷の境目以来迠出入無之様ニ可被入念事
一 今度縄打被申候 組々下々至迠万ニ不作法無之様ニ可被入念候 勿論喧嘩口論少之義成共出入無之様ニ下々竪可被申付候事
一 他領と入組分ヶ郷有之村候ハバ 其給人江所□被□汰ニ尤候事
一 今度縄打郷村により以前之高ゟ不足ニ成る所も可有之 又出候所も可有之明鏡に縄打被仕之上ハ不足し共可為共通事 間竿は田舎間六尺壱分之事 但弐間竿壱丈弐尺弐分
一 今度縄打之儀一入慥万可被入念候 無申迠候得共 強くも弱もなく 正路打可被申事
一 検地之村々上之郷、中之郷、下之郷、見分分米付候詮儀肝要之事
一 田畠上中下肝要ニテ候 不及分別ニ所ハ近所之縄打者と立合致談合上中下無□□様可致候事
郷中先高之内ニテも隣郷へ入郷境能与存し所は近郷縄打者被致談合究可申事
附井堰堤に改度与申場候ハ見分之上致詮議可被申付候
反数多打候ても廉相ニ候て無益之事ニ候 但致油断稼不申候て脇より聞候 願不及申以来聞□共可為越度事
一 付荒れ田 不作ハ半紙ニ付宿ニ帰詮議之上種代程在之所ハ可改付荒壱斗共弐斗共可取所ハ吟味之上下毛ニも付可被申事
一 親譲之田地之儀子共分持候ハ 銘々ニ其所ニ名を書付帳ニ付可被申候事
一 壱組之内ニテ改手分を打候事仕間敷候 但遠キ所ニ壱弐反も田畑有之ハ組頭相談之上ハ可為各別事
一 道校之打詰申間敷事
一 郷移之儀慥奉行ゟ差候分次第移可被申事
一 郷中ニテ写候帳振奉行之者ども読合を究其末ニ改右書判仕名主百姓ニ渡可申事
致案内候名主百姓屋敷少宛引ニ分屋舗帳其者之所ニ反歩何らハー外何程引と書付可被申候
附高安畝又ハ壱畝迠之内高下可有之
勘定場之内帳書場江他之者入申間敷事
一 縄先打之手ゟ打境に念を入塚をつき不紛様ニ分米を立置可申事
一 郷移伝馬之義ハ馬数を書 其所ニ手形を出置可申付事
一 小前之儀応分銀遣可申候不入所人夫不費様ニ可被仕事
一 扶持方之儀帳奉行主人者一日一升宛之事 但下々者壱人五合宛
一 四人之外竿取有之者竿取之分一日壱人壱升宛之事
右竪可被相守事
年号月日
縄打衆
検地掟全体として、強調していることは ①正路第一、②上中下にわけること、分米つけ肝要のこと、③間竿は田舎間六尺壱分をあげていること、④検地組四名でやること、手分けしたり、喧嘩したりしないこと、⑤検地役人の扶持方について、などであろう。