小物役、浮役といっても江戸時代後半の苗木領で「小役」と一括して、担当役人がまとめているように、この区別は、はっきりしなくなり、正租同様に毎年一定負担を課せられていたと考えたい。
こうした負担の中で現在も「役にでる」という言葉でいうように、百姓の高持割(高割)、または百姓はどの家も同じように(鍵役という)負担しているのが小物成に類するもので、これに対して、ある特定の収入なり、行為に対して賦課したものが、運上・冥加である。
そしてこれらは、一定の基準をもうけて、はじめから金銀納が主体的であった。農業以外の特定の収入となると、百姓も含まれるが、農、工、商の被支配層のうち、工、商が対象となることが多くなる。つまり職人、商人が対象ということになる。宿である中津川町内を除いては、半農半商、半農半職の形態が大部分である。諸職商人と、その運上・冥加などを、明細帳でみると、例えば駒場村では、
前略
一 小物成山林年貢等元地頭江相納申候 水車酒造運上等無御座候
一 質屋株壱 冥加銀 名古屋藩江差出申候
一 大工四人 木挽壱人 札銀年々名古屋藩江差出申候
後略
(その他の村については、市史中巻別編「村の様子」を参照)
[参考]
藩別 運上一覧(濃飛両国通史による)
○岩村藩
水車 瓦焼 荷物継場 鉄砲 川船 茶葉 紙船など
○苗木藩
石灰竈 商人 大工 左官 畳屋 桶屋 鍛冶屋 畔(黒)鍬 指物師 壁師 石工 表具師 鍬柄師 旅籠屋など
○名古屋藩
池川漁猟 瓦焼 鉄砲 紙船 茶 檜椹 麻皮 漆 塩 網 石灰竈 荷物継場 質屋 奉公人口入 青物屋 出商魚問屋 酌女など