幕藩体制の根幹である年貢納入に関する文書として、郷帳、免定、皆済目録の地方(じかた)三帳がある。
この三帳のうち、郷帳、免定は中巻別編(四七五頁)にゆずって、ここでは、免定交付から、その年の年貢皆済を本途物成を中心にしてまとめてみよう。
免定には、村として納入しなければならない年貢量と納入すべき期限、村内で公平に個人割当すること、などが書かれている。
そこで、村方としては、年貢について、本途物成以外にもふれて、個人として、どれだけ納入しなければならないかを、はっきりさせる「百姓銘々年貢勘定帳」(中新井村の場合)をその表題は支配によって、村によって、若干は異なっているが、作製しなければならない。
次に、免定に示されている納入期限をみると一一月晦日、一二月一〇日以前、一二月二〇日以前などがあるが、この期限までに実際に誰が、何月何日、どれだけ納入したか、納入現場の記録帳=年貢納庭帳(蔵納帳ともいう)(中新井村の場合)をもって、納入をチェックすることが必要である。
納入される側である代官としては、納入が規定通り行なわれたか見分し、監査しなければならないし(中勘定)、納入についてはそれぞれ受領書を発行する必要があるし、村全体として翌年になって皆済されたら、村に納入を免定で下命したように、村に対して皆済目録(中新井村千村方では「覚」となっている)を庄屋あてに発行しなければならなかった。これが正式の年貢受領書である。
覚
一 米三拾石五斗五升 [辻原 中新井] 村之内
右是ハ去酉年御物成米納払方小帳小手形を以 勘定無相違相済候
残借米当戌暮取立之来亥春借元ニ相立候 若村中申分於有之者 吟味の上可為反古 者也
天保九戌年八月
佐 仙左衛門 印
安 貢 印
田 庄蔵 印
中新井 庄屋
儀兵衛 (林家文書)
天保八年(一八三七)酉年の年貢の正式受領書が翌九戌年の八月に発行されて、しかも借米については、九年の暮にとりたてて、翌々年の天保一〇亥年春に相立てるというわけであるから、年貢免定が発行されてより、まったく皆済までには、足かけ三年かかっているわけである。
そこで、この足かけ三年にわたる年貢納入の動きに順次ふれてみよう。