大根木内一六名の百姓のうちから、禄右衛門についてまとめたのが、Ⅱ-60表である。禄右衛門は、大根木一六名中九番目の個人高(第一位八石一斗余)で、大根木以外には田畑を持たない百姓である。Ⅱ-60表によると、
①合高(A)と取米(B)の割合は約四割八分で、文政一三年の免五ツ三分よりひくいが、口米、諸役米など「納むべき米」との合計(F)、それに村費分担分を含めて総合計(H)では、八割近くなっている。
②禄右衛門の実際の出し分(Ⅱ-60表)はb~lの部分である。禄右衛門は表のb、cの項餅米、大豆などは正税(年貢)の一部として納めている。大豆について、阿木村では大豆四斗=米三斗三升三合として、大豆四一俵(一俵四斗十二升込)を納めている(元禄差出帳・別編六六九頁)。餅米は同様に四二俵上納している。これらの割当の一部であろう。
③e項は助郷の分担米である。
④g項の中津川払米一石六斗(約四俵)は郷蔵におさめ、指示に従って中津川へ出した分である。
元禄差出帳によれば、「御払い節」として他領では中津川、大井、猿爪[瑞浪市陶町]、明知[明智町]、領内では岩村、川上、竹折をあげている。この蔵納米の米拵について、岩村領の村では「納米四斗入 外に二升込米 米拵はあら小米とり 縄俵二重かわ すり縄にてつくる事」となっており、中津川村(中川旧記)でも同様に「俵拵上ハ皮懸、不動縄五所タバネ…」となっている。
⑤j項の「甚蔵払い」は同村野田の甚蔵がかかわって出した分で、甚蔵が禄右衛門に対して何か借金でもあったのであろうか。
⑥k項は村入用費のうちで「川除分担金」である。広岡新田の元禄差出帳によれば、「川除又田畑損の節は村人足にて普請、人足一人に七合五勺」となっているから、八・四人の人足となる。
⑦合計では約一斗九升過分となり、これを代金勘定している。
Ⅱ-60 文久二年 阿木村大根木の百姓禄右衛門の年貢