[身元証明]

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不審なる宗門の者ではないという証明がなければ、結婚はもちろん、奉公に出ること、旅行にでることもできなかった。例を結婚でいうと
・宗門地請状(地請証文)生家の村の庄屋が嫁入りする娘は、いうまでもなく、親、親類に御法度宗門の者は一人もいないことと宗旨代々何寺に間違いないと証明して相手方村の庄屋へ送るもの。
・宗門送り一札(寺送り一札、寺替証文)結婚などで他村へ移り、嫁入り先の家の旦那寺の旦那になる場合に、実家の旦那寺から、嫁入り先の旦那寺へ「貴寺の旦那として作法通り取計ってくださいますように頼みます」とする「両寺納得の上寺替」の証文。
・奉願口上覚(結婚の許可願上)嫁入先の戸主が庄屋に対して、生所もたしかなる娘との縁組だから、よろしく頼みますと願いを出すと、それをうけて村役人(庄屋)が代官に対して、吟味をしたが、生所はたしかな者だから、本人の願い通り、縁組を許可して下さいと願い出たもの。
 かくして嫁入り縁組が許可されると その翌年春には 入人御注進之覚(増人御注進)により人別帳に入れられる(市史中巻別編八一七頁~八一八頁)。不審なるものではないという宗門証明が、こうした手続きで進められた。