縁付くと、「○○女房 生所○○村 誰の娘」と記載され、その女性の名前の記載がなされない場合が、この湯舟沢村だけでなく、一般的になっている。そして夫が死亡し相続人が小さい場合には「誰々後家」倅が戸主になれば「誰々母」と記載される場合が多いので、娘時代までの名前がわかる分について、享保二年(一七一七)分で女性名及び同じ名前の数を調べてみると、次のようであった。
○一人しかなかった名前 いね、いよ、いま、くも、くま、きよ、かな、こう、かの、かね、しま、すへ、さつ、すき、さん、たま、ため、つう、とめ、かい、ふう、ふか、みつ、まつ、まき、やり、よし
○二人あった名前 きく、せき、みや、まん
○三人あった名前 あき、しも、せん、たけ、ゆき、なべ
○四人あった名前 をと、くに、はる、はな
○五人あった名前 志よう、すて、とら、はつ、なつ
○八人あった名前 あま、かめ
これらの名前を五十音図別にすると
○あ行-あき、あさ、あま、いね、いま、いよ、をと(わ行)
○か行-かね、かの、かめ、きく、くに
○さ行-さん、しま、しも、しょう、じょう、せき、せん、すて
○た行-たつ、たて、たま、つう、とめ、とら
○な行-なつ、なべ
○は行-はつ、はな、はる、ひし、ふう、ふか
○ま行-まき、まつ、まん、みつ、みや
○や行-やゝ、ゆき、よし
女性名は全部かな文字であり、植物名、動物名がそのままの、はな、たけ、かめ、とら、などのように多く、はる、なつ、などの四季名もかなり目立つ。女房、母、後家は名前がでてないのだから、以上の分類の実際数はもっと多いだろう。