溜池灌漑

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溜池灌漑は、次の二つにわけられる。
 ①谷池-山間の谷部を利用したもの、または河川より引水して大溜池に連絡した小溜池があるもの。
 ②皿池-奈良盆地に点在しているものが典型で、非灌漑期に貯水しておき、もっぱら養(やしな)い水として使用するもの。
 中津川地域の溜池は、①に示した山間の谷部を利用したものが多いが、利用法としては田植期には河川灌漑による用水を使い、養い水として、溜池を利用する場合もかなりある。
 明細帳に記載されている溜池の数を村ごとに示すと、
 湯舟沢村 記載なし 落合村  なし  中津川村 一か所  駒場村 なし   手金野村 不明
 千旦林村 四か所  茄子川村 九か所 日比野村 二百か所 瀬戸村 二六か所 上地村  五六か所
 阿木村  一〇か所 広岡新田 三か所 福岡新田 一か所  青野村 なし   両伝寺村 なし
 飯沼村  一か所  大野村  二か所
 となり、苗木領内三か村(日比野、瀬戸、上地)が異常に多い。ついで茄子川村、千旦林村、阿木村とその枝村がつづいている。数だけでなく、溜池の広さも考えないと、貯水量つまり灌漑面積については、あげられないが、中津川地域において、溜池灌漑にたよることが多い地域を知ることはできる。その中で茄子川村の明細帳(千村方分)には、
 
 此村用水の儀は沢の出水(清水のこと)其外入会溜池等も御座候得共(山村方尾張方と入相知行)其場所により 出水ばかりにて井口悪処旱続は旱損の所に御座候
 
 とあって、河川灌漑が不十分で、それを溜池で補っているが、旱害になりやすいことをいっている。同じようなことを、中津川の明細帳では、
 
 此村用水懸並天水場(自然灌漑)子野大旱なれば旱損これあり 大雨洪水等にて井口落候節は村内残水つくべく申さずよう相なり候
 
 としており、上金、子野が旱害になりやすいことをいっている。
 このように、河川灌漑の不十分なところを溜池で補っても、旱害には対処しえなかったところがある。

Ⅳ-1 広岡新田の溜池

 用水関係の資料はとぼしい上に、調査も不十分であるが、以下、用水建設、用水修理、用水慣行などにふれてみたい。