救荒植物

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この地方で救荒植物として、よく知られているのは「令法(りょうぶ)」の葉であろう。太平洋戦争[昭和一六年から同二〇年まで]を体験した人たちの中には「令法飯」の味を知り、その他に多くの山野草を食した経験を有する人が多い。これらの植物の中には、その季節に日常食べる山野草もあるが、多くは飢餓状態の中で食糧の不足を補うために採取されたのである。江戸時代の凶作とは事情が違うが、人間が飢餓の中で生き延びるために、正常な状態の中では捨て去るものを食べたことは全く同じである。

Ⅳ-37 りょうぶの葉と笹の実

 ここに再掲した救荒植物は、市史別編(八)村の生活に所収され 尾張徳川家太田代官所の触れをまとめた「触留」(尾沢家文書)の中にあったものである。内容は草根、木実の利と害・食べ方が書かれ、この様な書物は天保以降多く出版された。別編には赤坂宿大橋某より伝授された「藁団子の製法」も所収されている。
  救荒植物
 くず 根をすりつぶし汁をとり濾す わか葉はあぶりて食う。ふる葉は馬に喰わす。
 わらび・ぜんまい 根のこしらえ様はくずに同じ わらびばかり食へば病を受く。
 栃の実・椎の実・どんぐり いずれもうりを削る。灰汁(あく)にてゆで水にひたし、干して粉にし何にても混ぜてだんごにする。また 流れにつけて一夜おき煮ても喰う。
 からすうり いずれも皮をけづり四・五日水にひたし、搗き砕き袋に入れ水に振り出す。焼もちなどにする。
 すすたま 飯・粥にする。また、粉にしてだんごにする。
 はす わか葉はゆでる。実は搗き砕き、粥にてもだんごにてもよし。
 おにばす 茎も葉も灰汁にてゆでる。茎は皮をとり根は煮る。実は皮をとり飯にも餅にもする。
 ひし 皮をむき蒸し煮る。また、茎も干し粉にし餅米などをまぜて煮る。粥にもする。
 ひるがほ 根は塩を混ぜ蒸して煮る。また、さらし干し搗き砕き飯に混ぜる。また、うすにてひき焼餅にする。
 ところ 横にきざみ煮て一日流れにさらし、また、灰汁にて煮て水をかえ二日程おき、何にても混ぜて食う。
 鬼ゆり・姫ゆりの根 をゆでる。
  ○山の芋○はこべ○たんぽぼ(乳のはれたるに煮て汁を飲む)○いたどり(産後よし・はらみ人に毒)○なづな○鬼なずな○うど(茎も葉も)○よめがはぎ(今いう野菊)○やまにんにく○けいとう(痔によし)○志そ(酢とくい合せ)○すぎな○ははこ草(五行蔦ともいう)○べにのなへ(はらみ女と隠居に毒)○よもぎの葉○つるむらさき○こうほね。
 右いずれも塩をまぜゆでて食う。
  ○山ごぼう(根も茎も)○しょうぶ○おけらの根(黒い葉をとる)。
  いずれもきぎみ灰汁にて煮る、両三日水にひたしたのち食う。
  ○なるこゆりの若芽(根も)○ねぶの木の若葉○栗の葉○桃の葉○まる葉柳の葉(ほってながきは悪し)○りょうぶ○ゑんじゅ(花も葉も落葉も)○はりぎり(針のある木なり)○くぬぎ(実も若葉も)○藤の若葉(産婦ハ毒)。
 右いずれもゆでて水にひたし、あくを取り塩を入れて食う。
  ○ほうし花○ほうずき○ほうせんか。
 いずれも水にひたしてあぶり塩を入れて食う。
 うつぼ葉 灰汁にて煮る、二日程水にひたし、秋の枯れ葉も食う。
 ほこもの芽 ゆでて塩を入れる。搗きて米など実に混ぜて粥にする。
 よしの芽 いまだ土中にあるものよし、こしらえ様は右に同じ、根は生にても食う。
  ○おおばこ○のひる根○すもとりくさ
 いずれも葉をゆでて一夜水にひたし、あく、ぬめりを取りて食う。
 どくだみ 根をむして飯に混ぜる。塩を入れる。
 おにあざみ こあざみ いずれも灰汁にてゆで、水にひたし二・三寸の時は根も食う。
 かやひき草 野むぎともからむぎともいう。つきて皮をとりだんごにする。また、葉もつきて米に混ぜだんごにする。
 せり ひる子をひりつるハ毒、赤せりハ毒、右いずれも塩をまぜるがよし。水にひたすものいつとも水かえる。草の根本の葉の類に油を入れれバやわらかになる也。
 米のさやぬか 二・三日水をひたし、かきまぜし水をかえ、あくをとり、日に干しいりて粉にす。米の粉等に混ぜだんごにし、また、湯茶かきたてて食う。
 わら 根本に五寸 末五・六寸切り捨て二・三分ずつ刻み、二日・三日水にひたし日に干し、ほうろくにて煎り、臼にて引きふるいにかけ、その粉に何でもまぜてだんごにする。
 松の皮 老木ほどよし。内かわのあまかわにがし、外のあら皮を臼にて引きふるい、煮かけて釜に入れ粉一升に水二升程いれ煮えたてて、一夜ふたとらず置きて上水を流し布にてしぼり、何にても混ぜてだんごにする。