勧化帳に見られる講

802 ~ 803 / 922ページ
勧化帳には、信仰の講ばかりでなく他の講仲間も見られる。講とは一つの目的を持った集団のことであり、経済的な相互扶助を目的とした頼母子講(第九節参照)も、五百羅漢寄進者に名を連ねている。「五百人講当り連中」・「富当り八人組・千旦林世話人彦蔵」など、富くじの掛金を出し合い富くじを当てた連中も、指定された旅籠などに宿泊できる組織も、すべて講の呼称をつかっていた。ここでは信仰を中心にした講をとりあげることにする。「五百羅漢勧化帳」には、前述した五百人講の他に、Ⅳ-57表の講連中が寄進をおこなっている。これらの講は、いずれも信仰上の集団であり、次の三つに大別することができる。
① 秋葉講、津島講、伊勢講などの様に御師らによって組織され、集落の分社を中心にして講がつくられた。
② 民間信仰ではあるが、仏教などの宗教に起源をたどることのできる講。
③ 庚申講などの様に民間信仰であるもの。
などである。

Ⅳ-57 五百羅漢寄進の講名一覧

 しかし、民間信仰の場合は、その時代、時代により移り変わりがあり、どの範囲に入るのかはっきりした線を引くことはできない。勧化帳に見られる講は、②の範囲に位置づけられ、観音講は観音の霊場を巡ることで知られる様に観音に対する信仰が源流であり、阿木・広岡、川上(かおれ)庚申堂など市内各所に近世につくられた三十三観音の石像が建立され、川上観音堂には三十三観音と千手観音が祀られている。
 また、和讃講は経文の偈[仏の力をたたえる]を和文にして謡うものである。行者講は山岳宗教とかかわり川上庚申堂には役行者の石像が造立され、恵那神社にも合祀されている。念仏講については、呼称は一つであるが、多様な面があるので項を改めて書くことにする。