次の品々は飯沼村庄屋を勤めている藤四郎の弟が閑羅瀬(しずらせ)[串原村]へ婿養子に行くときの結納の品である。
・小袖式壱両弐分 ・上下代金弐百疋 ・こんぶ二折
・樽一荷 ・するめ二折 ・鯛壱掛 ・扇子壱箱
「全国風俗御問状」では、熨斗、昆布、鯛、するめなどの他「永きを祝して帯地など」と、あるが「多くは苞(つと)、さかなニ而相済申候」と、一般農民の結納の品も書かれている。二つの例を比較すると大きな差があることが分かる。
広岡の市右衛門家の「祝言之節銭別之覚」では、嫁に行く娘に対して近所や知人が、餞別や風呂敷、それに紙と手ぬぐいを贈っている。「全国風俗御問状」に見る婚礼の振舞いは、一汁三菜から一汁五菜となっており、旧家に残こされている豪勢な献立には及びもつかず、このことは「苞さかな」の結納でも知れる。