水戸浪士の中津川通過に際しては、その動静を知るいろいろの書簡や品物が、浪士通行に関係の深かった市岡・間両家等に伝っている。その一つは前田青邨画伯の「郷里の先覚」景蔵・香蔵の肖像画中手にもつ鎧片袖もその一つである。これは田丸稲之右衛門が通行の際「予有故与同志数千 道歴美濃国恵那郡中津川駅憩方町長市岡長右衛門家、其人温厚高義予感之 故解所伝用甲胄之片袖授与之以後昆之験云」この添状をつけ玉子色の羽二重に白麻の裏をとり八房付の赤の紐の着いた黒色縅の鎧片袖を市岡長右衛門に送っている(口絵参照)。
まだほかに詩歌の短冊・書幅・寄書・その他多数の関係書簡も伝わっている。