前述した県廃合の動きの中で全国にもさきがけて苗木から廃県運動が起っていることは注目すべきことである。苗木県では廃藩置県の直後八月一七日、県政の最高責任者である大参事・青山直道と石原定安は「…当県ノ如キ区々一小地方猶官庁ヲ建置候テハ 官員俸給其他公廨諸入費ノミ莫大ニシテ万一モ国家ニ裨補ナク、臣等徒らニ素餐ノ罪ヲ増殖シ候儀ト恐悚至極奉存候 伏テ冀クハ速ニ臣等カ職ムヲ免セラレ 廃県被仰出候様仕度奉懇祈候 此段宜御報奏奉願候…」と当県は小県で役所を置くことは役人の給料その他莫大な費用がかさみ、国家の利益とならない。従って大参事両名を免職し苗木県の廃県を吏官に願い出たものである。
また同日県役人も大参事の免官願を出したことにならって「私共於テモ速ニ解免被仰被下度 此段伏テ奉願候」と辞職願を大参事宛に提出したので両大参事連名で同日この旨を吏官へ届けでた。