▲ 一、村々の庄屋・長百姓の衣類は粗末なものとし、帯も木綿類を用いよ。年頭が御城で裃をつける場合も右と同じにせよ。夏の衣類はすかしの羽織や上平類の袴は着けてはいけない。
附(つけたり) 他へ出向く時は、紬・絹まではよろしい。
一、庄屋長百姓の女房・娘の衣類は紬類、帯は絹紬の染帯とし正月のみ用いよ。平常は木綿たるべし。尤も絹以上の織物類は婚礼の際も着てはいけない。夜着ふとんに至るまで、右に淮ずること。夏の衣類は質素のものを着ること。
附 他へ出向く時は正月の衣類に淮ずること。
一、他所へ縁組やりとりの時は、衣類決めの通り平常の暮し方を細かく打合せ華美にならざること。
一、小百姓の衣類は、粗末な木綿で帯に至るまで木綿類を用い、たとい婚礼の時でも絹・紬はかたく禁ずる。
附 えり・袖口・頭巾等に至るまで、絹類は用いてはならない。
一、神社・仏閣は以前からの格に応じ補修し、新規に建立の儀は堅く禁止する。
附 祭礼の儀は、以前からの仕来たりよりも軽くせよ。
一、家の普請は分相応にし、華麗な普請はやめよ。
一、婚礼・法事の節、一汁三菜以上はいけない。寄合うのは親類のみとし、その他の者は庄屋へ相談して指図をうけよ。酒は三献とする。
附 領内にて婚礼の節、仕立ては甚だ軽くして華美にならないようにせよ。
一、婚礼の節は、駕篭・乗物を用いてはならない。
一、諸役所への贈物は僅かな品でも一切禁ずる。
附 村内での贈答は親子兄弟のほか一切してはならない。若し縁故の者には格別のこと。
一、村方へ諸役人が御用で一泊の節は、有合せの品で一汁一菜とし、酒は出さないこと。
一、脇差拵えは華美にならないこと。大脇差は着用しない。
一、見物旅行は以前からの通り、堅く禁止する。
一、ふるまい饗応など一切してはならない。
この『定書』が骨子となり、以後倹約令として度々出され、藩財政が困難となってくることを物語っている。「高山村倹約御請書」嘉永七年(一八五四)・安政二年(一八五五)、さらに『高山村倹約記』と、農民にとっては常にはげしい労働と耐乏生活が強いられるのである。
高山村倹約御請書〔史料編四六九〕高山区所蔵