元禄期の苗木藩における『村方年貢紙真綿割賦覚帳』(史料編二四六)によると次のようである。
▲ 村方年貢紙
一、小紙七拾壱円(まる)三束四帖 佐見・白川・黒川分
外ニ
六円九束五帖ハ、享保十七(一七三二)子年御上知、大野・小野・吉田・寺前右四ヶ村分賦
一、同四拾四円壱束九帖 中通九ヶ村分
一、同八拾四円六束五帖 五ヶ坂下村分
一、同三拾九円九束五帖 蛭川村南方村々
合弐百四拾円壱束三帖
但、上地・瀬戸・日比野右三ヶ村、年貢紙ナシ
村々船役紙
一、小紙拾七円五束弐帖 佐見・白川・黒川
外ニ
壱円弐束八帖
御上知四ヶ村分引
一、同七円壱束五帖 中通り九ヶ村分
一、同四円六束 五ヶ坂下村
一、同弐円五束 蛭川南方三ヶ村
一、同壱円四円五帖 上地・瀬戸二ヶ村
合三拾三円弐束弐帖
但、日比野村船役ナシ
二口合 弐百七拾三円三束五帖
村々年貢真綿
一、三貫弐百六拾壱匁八分 佐見・白川・黒川
外ニ
弐百六拾五匁ハ、上地四ヶ村引
一、三貫五百六拾弐匁 五ヶ坂下村
一、弐貫拾七匁弐分 中通り九ヶ村
一、壱貫八百六拾壱匁 蛭川南方三ヶ村
一、五百三拾弐匁 日比野・瀬戸二ヶ村
五口〆 拾壱貫弐百三拾四匁
但、上地村掛綿ナシ
右、代米弐拾弐石四斗六升八合
但、百匁ニ付、代米弐斗
中百目ニ付、弐拾匁入目
下百目ニ付、三拾五匁入目
右掛綿村々訳ケ
一、三百三拾七匁 日比野村
一、百九拾五匁 瀬戸村
一、壱〆七百五拾三匁七分 坂下三組
一、百五拾六匁三分 上野村
一、三百五拾三匁 下野村
一、三百三拾七匁 田瀬村
一、五百七拾九匁 福岡村
一、三百八拾四匁 高山村
一、六百六拾弐匁 蛭川村
(中略)
都合拾壱貫五百匁
内、弐百六拾五匁 上り地四ヶ村引
残テ拾壱〆弐百三拾五匁也
右の船役(ふなやく)とは、紙漉(す)き船(紙漕(かみふね)に紙の原料液を貯えた)のことであって、この船役の数に応じて課せられた営業税である。またこの頃になると、課税対象も広範囲となり、それらが代米というかたちで代納されたようである。この代米を主要種目でみると、
▲ | 糯 | 一石 | 代米一石 | 鍬柄 | 一〇挺 | 代米八升 | 油荏 | 一石 | 代米八斗 |
小莚 | 一束 | 代米八升 | 稗 | 一石 | 代米三斗 | 牛蒡 | 四把 | 代米四合 | |
蕎麦 | 一石 | 代米四斗 | 斧 | 一挺 | 代米二升 | 小豆 | 一石 | 代米八斗 | |
しも莚 | 一束 | 代米一斗二升 | 粟 | 一石 | 代米五斗 | 小縄 | 一束 | 代米一升二合 | |
大豆 | 一石 | 代米八斗 | 糀 | 一石 | 代米一石 | 小麦 | 一石 | 代米五斗 | |
入草 | 一駄 | 代米八合 | 大麦 | 一石 | 代米三斗 | 鍛冶炭 | 一俵 | 代米一升二合 |
などとなっている。
これらの小物成は、最初は現物または代米で納められていたがしだいに金納となるものもあり(明(あか)し松)、小役米という名目で統一されて付加税となるものもあり(糟・藁・鉄砲役・炭)、新設されるものもあり(葦板・きの子札・しめじ・かちぐり・雑魚(ざっこ)など)、また最後まで現物で納入されたもの(かけ綿・真綿・柿渋・縄・大豆・油莚など)も多かった。また毎年同一数量またはそれに近い量を納めるものと、年によって量に変化のある大豆・小豆・蕎麦などがあった。小物成年貢のうち紙についてふれてみると、