戸籍簿の役割りをもった生活との結びつきの強い宗門帳であるから、もし、この宗門帳から除外されて無籍者になれば人並みの暮らしができない。このころ、勘当とか久離を切るといって、不行跡な息子などと肉親の縁切りが行われた。家から追い出すのを勘当、家出している者との縁を切るのを久離を切るといい、庄屋に届けて藩の承認をとり、宗門帳から外す。これを「帳外(はず)し」「帳外(ちょうがい)」といった。この帳外になった者を「無宿者」というわけである。行状がよくなれば、ゆるして宗門帳に入れた。このような帳外は、本人の懲らしめというよりも、一家・親類・五人組・村方の迷惑から、親族の罪を免れるためであった。伊勢参宮・西国巡りなどを機として、風来づれと駈け落ちし、宗門改めの時期を迎えるに際し宗門帳の不備を繕うため、止むなく帳外処分にしたものが多い。
天明五年(一七八五)高山村の八百助は、人柄悪く乱心・発作など不埓の行動についに勘当もやむを得ずとお取次を村役人に依頼して家族から宗門外しが代官に願い出される。
▲ 差し出し申す口上書の事(読みくだし)
一、多助帳内伯父八百助儀、人柄悪鋪(あしく)御座候につき、前回勘当の御願い申し上げ候ところ、村役人衆中より呼び寄せ意見申し候よう仰せつけられ候につき、呼び寄せ意見申し、殊に御役人衆中より何かと御申し聞下さるにつき、暫く足どめいたし居り申し候ところ、とかく人柄相直り申さず、殊に乱心にて御座候得ば、諸親類、組の者申し候も一向相用い申さず、この度作出仕り候、段々の不埓に候えども、何卒人柄相直し申すべきと諸親類ども寄合い、篤と申し聞候得共、中々相用い申さず候につき、よんどころなく、小帳面除(帳外し)御願申し、勘当仕り度存じ奉り候間、御取次御願遊ばされ下さるべく候、尤(もっとも)、前回差し出し申し候口上書、御役所に御預り置き下され候、この度御親類組中篤と談合の上にて、御願申し上げ候処、相違御座無く候 以上
天明五年巳八月 預り主本人 多助印
親類惣代 次平印
組代 次助印
五人組頭 勘七印
御庄屋 彦兵衛殿
御組頭 安平殿
同断 吉兵衛殿