庄屋の任務の主なるものには、年貢の収納、郷蔵保管米の管理、触書、回状文の控を写し取り次村への継送り、宗門改帳の作成、村入用の収支決算、留山の巡視管理、入会草山の管理、水利の維持管理、川除道普請、助郷人足・課役人足の差出し、治安維持、村民願書の証明、村内病人・喧嘩口論の世話にまで及んでいた。庄屋世襲でない所では交代時の引継文書が残っているが、これには帳簿や村規定書など五〇余種が記載されている。
山口村にはそのほかに「きびうの渡場」の管理と、山口川並番所の杭打土場があり、これの課役があった。川狩輸送の行われているときには、木曽川河畔にある村内五ヵ所の雨小屋の火たき人足の差出しと、明松や薪の調達があった。増水時には川上から多くの流木があり、この際にはすぐに人足を出して引き揚げ、杭打土場に保管しなければならなかった。
田立山や裏木曽三ヵ村山に出入する尾州表や上松材木奉行所の役人は、きびうの渡を越えて往来した。これらの役人の昼支度・宿泊は庄屋宅で世話をすることになっていた。伐木が行われているときには役人の出入が頻繁になり、同時に山会所と上松材木奉行の連絡回状が多くなり、村継が大変な費えとなった。