栗の実採取の取り決め

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当村では享保九年検地までは、山村代官に椀飯に「勝栗」一斗二升を隔年置に納入している。栗は食糧としても大切であり、栗の実拾いについて幾度か取り決めをしている。「外垣庄屋用要留帳」宝暦元年(一七五一)八月一八日付山村役所から、次の申渡しがある。
当年の儀何方も栗の実なり候由、去々年も申触候通糧にも相成候、調法成物に候ハバ、いまだ不熟をも打落し、或は枝など伐り候而拾い候様成儀ハ有之間敷事ニ候得共、弥左様成儀無之拾候ハ、お互ニ成熟し落候を拾い可申候、万一制し候ても不聞入者有之候ハバ、其所役人ニ申達咎可申候、所役人申付候而も於不相用い、其段役所へ可申達候、急度吟味可被仰付候
 右の申し渡しより四一年後の寛政四年(一七九二)八月朔日(外垣同帳)の条に「山口村上竹組、道垣戸組の組頭」から、個人の控林、野畔等にあたる栗の木の実拾いをすることは差し留めにしてくれと申し込みがあり、村役人と相談したところ、もっともなことであると決り、組々へそのように通知をした。
 同月八日に与七垣戸・林・川原田組より願出があり、銘々の控野畔の栗、朝の分は地主ばかりにてひろい、他の者は拾いに入り込んではいけないと申触をされたが、そうなると栗の木のない者は難儀をすることになるから、今までのとおり拾いに入ることを認め、地主方にてたたき落して採取してしまわず、落ちたものを拾うようにするよう、奉行所にお願いしてなりとも願のとおりに計ってくれと申し出があった。楯庄屋とも相談したがそれは余りに自由がましい願である。栗に限らず諸品銘々の控地の分は地主が取る筈のところ、近来当村の者はそのもとを忘れ栗などは軽く思い、他人の野畔等へ竹など持参してたたき落すようになり、一向でたらめになったので、当年林持の者の願によって次のよう申し付けた。栗を拾うことを全面禁止にしては、孀(やもめ)暮しの者など難儀になるので、朝栗だけは拾わないように申し渡し、福島役所に出張したときに奉行に伺った上で、はっきりと決めるからそれまではこの申し渡し守るようにと申したところ、今栗の季節であるから奉行所の決定が下るまで去年までのとおりにしてくれといって聞き入れないので、明日村中一統相談の上、いずれも納得の上に致すからと申渡し引取った。
 八月九日当初番頭衆と十三組頭打寄り相談いたしたところ、庄屋衆の了簡次第ということになり、両庄屋相談の上にて、「栗の木の事は先達申触れたとおり、朝栗は決して拾はぬ様にする」と決定した。