苗字帯刀御免の者之申談書

819 ~ 821 / 667ページ
福島の山村役所は、苗字帯刀御免になった者に対して、山村役所に出仕の際における心得書を達している。
   苗字帯刀御免の者え申談書
 今般御勝手御用向格別出精に付、代代御目見の家筋、代代苗字帯刀御免の筈にて、御墨付にて書付下し置かれ候筈。其方儀御勝手御用向出精相勤候間、代代御目見の家筋に仰せ付られ候、向後此方御用相勤候に付、苗字帯刀代代御免仰せ出され候、其心得これあるべく候者也
  天明六年午閏十月                 福島御用達役所役人連名
一右帯刀の儀、此方御用向出精に付、仰せ付られ候儀に候得は、名古屋表え御達しはこれなく候間、名古屋御役所ならびに御役人衆向はすべて指控遠慮これあるべく候、此方御用達所え罷り出で候節勿論帯刀苦しからず候、且他所の儀帯刀の節は御家来の心得にて罷り在り、万一故障出来候節は、此方様にても御家来の御心得に御取扱わせ下し成され候筈「但売買事出入に帯刀の身分不相応の所業等に付、故障出来の節は、右の御取扱わせ節とは相成り難く候、兼て其心得これあるべく候」
一御用達所え出候節宿村願書類等は、苗字除申すべく候
一右苗字帯刀御免仰せ渡されの上、御勝手四畳敷において御目見その上御盃下し置かれ候
一出仕日
 年始 福島宿は元旦、他宿の者は宿々御礼日に出候筈、
 表御礼は只今迄の通り相済し候上、御勝手四畳敷において扇子壱箱指上べく、御目見これあり、其上御意もこれあり候
   但し他宿の儀は村役人え御盃表にてはこれなく候得共、苗字帯刀御免の者は此所にて御盃下し置かれ候
  御歳暮、福島宿は村役人同日罷り出一統御目見相済し候上、四畳敷において軽き一礼指上げ御祝義申し上げ、御目見御意もこれある筈、他宿は十二月朔日罷り出同断
  其外勤方諸事 只今迄の通り相心得べく候、尤も只今迄御目見輩の内、今般苗字帯刀御免の者宿方勤の儀は、庄屋より申談次第これまた只今の通り、以後とも心得違これなく様、其旨を存じべく候
 一座順の儀 福島他宿共、庄屋、問屋、年寄(但し帯刀の者上席)、代代御目見にて苗字帯刀御免の者、代々御目見の者、平御目見の者
   但し、奈良井宿は庄屋、問屋、年寄拾人役、次に代々御目見の者
 一帯刀御免仰せ出され候ても、常躰は帯刀仕候儀、好まざる者は其段申達候得ば、願の通り相済候筈
 一伜(せがれ)元服の上御目見願度候はば、庄屋は勿論平の者にてもその親が御用人役所え罷り出候て願候筈
   但し庄屋・問屋・年寄・伜(せがれ)、新規御目見相済候上に代役の儀は御用達所え相願申すべく候
  平の者伜、御目見願候以前庄屋え伜御目見の願指出し候旨届候て、其上相手願候筈、いずれも左の通り書付をもって相願候伜儀追追成長仕り候間、家筋に付御目見願い奉り御奉公仕らせ申度願奉候以上
       月 日                  苗字名印
     御用人御役所
  右願書出し候得ば、御吟味の上御日並相定め候て御用達所え御下知これあり候得ば、御用達所より庄屋え指図これあり候得ば、庄屋同道罷り出で新規御目見の伜、四畳敷において扇子箱指上げ御目見御意これある筈、苗字帯刀御免の伜、御目見以前にても苗字名乗り帯刀仕り候儀苦しからず候筈
 一御用にて罷出候節「鑓(やり)の間番所」に刀指置申すべき事
  其段御番中え申し通じこれあり候
 右の通り想得候様申談候
     天明六年午九月                石(作)貞一郎 奉之
    御勝手四畳敷
     御目見列
 苗字帯刀御免の者が山村役所に出仕した場合の作法を申し渡している。そしてこの格式は代代御免であったから家督を継ぐ者は元服をすると、その旨を申し出で御目見が許されて苗字帯刀御免となった。