山口村の産物

850 ~ 851 / 667ページ
右木曽の産物の書上げに椿油と榧油が書上げられている。椿油は男女ともに鬢付油として常用されていた。農家では自家用に搾っていたが山口村では多量に製していたようである。外垣用留帳に福島役所に村役人が出張した際、椿油を届けた記事がある。嘉永二年三月二五日の条に「勘定所役人下山総之進奥方注文の椿油代銭弐朱ト弐百文請取」とある。このように福島役所の「御用達」をうけていたようである。山口村の名産品として知られていたことがわかる。椿の木は現在村内各所にあり昭和六三年一一月一日「村の木」に指定されている。
 榧(かや)油も村の名産品であった。現在村内には、きびう(可知吉市)、与七垣戸(鈴木貞一)、六区(楯一郎)、八区(林荘治)一〇区(宮下敬三)に五本残っている。現在より約二七〇年前にかや油が産物であったから、そのころ大木が相当数あったと思われる。核(実)は食用にもしたが、寛政三年(一七九一)には中津川村の油屋作左衛門が泊り込みでかやの実の買集めに来村している文書がある。自家用やまた村内消費用にも搾ったとみられるが、油屋が買い集めに来村していたことをみると、村内には相当多くのかやの木があったとみられる。現在は、坂下町や中津川市の菓子鋪が「かやあられ」の原料に購入している。