朝鮮人参はウコギ科に属する多年草本。単に人参または御種人参・高麗人参という。満州・朝鮮の山林樹下に自生するといわれるが、薬用に供すものは栽培品である。わが国では享保四年(一七一九)対島侯が六株を幕府に献じ、有司に命じて下野日光に栽培したものを起源とする。古来その根は万病の霊薬として尊重されているが、それ程の薬効は疑わしいという。日本内地では福島・長野・島根の諸県で栽培されている。尾張藩では宝暦三年(一七六三)正月、次の触を出している。
尾州産朝鮮人参遂年繁茂に付、去る巳年(寛延二年、一七四九)より、御家中並びに御領分中御救の為、右製法の人参売出なし候、猶又今般御吟味の上御領分中広く軽き者までも御救いの筋相立候様にとの思召を以て、左の通り値段引き下げ、当月二〇日より売出為し候筈候間薬目半両より以下望次第相求申すべく候、尤御領分の内、所に取次の店をも出させ候て、名古屋値段今様売出させ候筈に候
上人参一両(註)ニ付代銀三十匁 只今まで百八十匁
中人参一両ニ付代銀二十匁 只今まで百二十匁
折人参一両ニ付代銀七匁五分 只今まで四十二匁
髭人参一両ニ付代銀四匁 只今まで二十二匁
蘆頭人参一両ニ付代銀二匁 只今まで十二匁
右の通り相極候
酉正月
(註) 両は目方の単位、四匁