宿は元来交通の機関として設置されたもので、村または在郷とは全く別の機構で、その交通に関する部分は幕府の道中奉行および藩の支配下にある。宿には宿の機能と運営を維持するために、宿役人が置かれていた。馬籠の宿は馬籠村一村から成立していた。村の行政組織の機能は、地方(ぢかた)の仕事と運輸や宿泊に関する宿場の仕事と二つが重複していた。そのうち地方に関することは、庄屋・組頭の掌るところであり、運輸宿泊等に関することは問屋・年寄の処理するところであったが、宿場では運輸や宿泊の仕事が戸籍や一般の年貢の仕事よりも重視される傾向がある。組頭などは宿役人に対して従の地位に置かれていた。元来は村役人である庄屋が、宿役人である問屋や年寄によって兼帯され、宿役人は同時に村役人であるという場合が少なくなかったのである。