幕府の役人の発行する証文によって人馬使用が許可されるもので、その証文の発行者は慶安四年(一六五一)には老中・京都所司代・大坂城代・駿府町奉行であったが、享保八年(一七二三)には勘定奉行も加えられ、寛政七年(一七九五)には、遠国奉行と道中奉行が加えられた。それらの発行者がどのような場合に発行しているかは、次のようである(駅肝録)。
○老中の証文
一御状箱御用物の品々
京・大坂・長崎・駿府・勢州・尾州・紀州・堺・相州・豆州・日光・佐州
一国々へ御奉書御用物
尾州より鮎鮨・三州より海鼠膓・和州より葛・石州より蜜・勢州御代参の節御箱・京都へ上使の節長持・他
○京都所司代の証文
御状箱御用・二条御蔵奉行長持・日光例幣使 他
○大坂城代の証文
御状箱其外御用物品々・大坂御蔵奉行長持
○駿府城代の証文
御状箱并熟瓜・茄子・白瓜・竹子・林香(りんご)・山淑(さんしょ)
○勘定奉行の証文
御上鳥并鷹匠御用・御猪御用・御薬草国々見分并持送御用・所々川々御普請并見分御用他
御証文を受けた者は、御朱印と同じようにその写しを、江戸からの場合は江戸の伝馬町の伝馬所へ出すとそこから行先に応じて、江戸の諸街道の入口である品川・板橋・千住・内藤新宿へ送り、そこから目的地まで宿継で「予定日・必要人馬数」などが伝達されるのである。