荒木田久老
十四日 晴 夜明大井を立木曽川に添行、中津川 落合橋あり、美濃、信濃の境也、馬籠 妻籠 三留野泊り、山田屋喜六宿至てよろし、終夜河音聞ゆ、
おちたきち流るゝ川の河音にやすいもなさぬ旅やとりかな
(後略)
伊勢内宮御師、荒木田久老のものした信濃めぐりの旅日記である。天明六年(一六八六)三月八日、伊勢山田を出発した久老は一二日に名古屋大曽根より中山道に入り一週間後の一四日に馬籠宿を通って善光寺に向かっている。久老は伊勢山田の生まれ、五十槻園と号した。国学者賀茂真淵の門に入り、万葉集の研究に励み、当時、同じ地で古事記研究に精魂を傾けていた本居宣長と相対していた。