東行日記 巳五月

東行日記 巳五月[目録]


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管理番号 七三
 
中山道史料番号 補遺七〇二
 
1     原本へ



東行日記
 
  巳五月 間 花押
 
 
2     原本へ



 米屋新兵衛居所
 南鷺町かね安といふ茶や
五月七日 越後人居之隊中
 小池五郎 隊長松田秀二郎
 書状持参 錯雨亭ニ泊 攘夷
 云々之談アりてそゝろ尓東京へ
 と志わく
八日 千村氏同伴野尻加納屋
 泊
九日 七ツ過福島着 益田屋泊
十日 旅亭へ馬籠 重寛来
十一日 拝謁論あり御知行所へ
   飛脚行 夜 山村様伺
 
 
3     原本へ



 此夜下山氏久々里の事言上
  東京飛脚来
十一日 御役場ニ而東京書状一見
 夕かたより御酒被下老若両君
 下山 村池 勝野
 此席ニ而若さま御手自
 御垢付御かたひら被下置
十二日 宿酒 難醒 四ツ頃発
 島崎重寛藪原迄追
 かけ 師家云々之事有
 贄川 小沢氏ニ泊
 
十三日 塩尻峠にて不二雲中
 ニ幽なり 能登国八幡之者
 五六人諏訪より同伴 樋橋
 村ニ泊
十四日 塩名田ニ泊 能登人
 同宿
十五日 松井田ニ泊
十六日 高崎ニて弥吉を訪
 伊助云々之事あり柳屋お梅ニ逢
 後おかんニ逢 岩鼻県ニ知
 
 
4     原本へ



 る人あり訪ニ不逢今東京
 ニ在之し 本店ニ泊
十七日 深谷の西にて
 尾張三位中将殿ニ行違ふ
 熊谷の東て
 山階宮の西上ニ逢  鴻巣泊
十八日 板橋ニ泊
十九日 朝東京ニ入神明前
 にて久々里市岡 谷ニ逢
 邸ニ至 横山 大脇 白洲 宮地
 談合なり 越方の事承
 
廿日 久々り邸を訪事あり
 越方のことも承る
廿一日 市兵衛を金杉虎岩
 氏ニ訪 同人病中なり
 久々里邸を訪夕かたより風
 かくて此日まて雨なし
廿一日 小雨 風邪 平臥
廿二日 小雨 如昨日
廿三日 雨 如昨日 午後市兵衛
 同伴 四ツ谷 信濃殿町ニ虎
 
 
5     原本へ



 岩をとひ 番町ニ青山氏を訪
 一泊
廿四日 小雨 同 松岡を訪
 三番町ニ平田先生西川
 氏を訪 立かへりて信濃 殿
 町知久屋敷にて具足を調
廿五日 雨 諸々買物 若松町ニ
 師岡を訪不遇白魚丁ニ田中
 を訪不逢
 
廿六日 召連たる者を国尓
 かへすとて書かく
廿七日 晴 浜口兄弟市兵衛
 を訪んとて吾旅亭ニ来
 此朝伊六 川越易之助同伴発
廿八日 晴 南鷺丁 金升を
 訪白魚町午寝して 師岡ニ至
 珍肴あり酒開 花火を
 見て夜中帰る風邪再
 発 夕方若殿 三村議六
 
 
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 林嘉蔵随従ニて来臨
 国元御急便と唱、五日ニして
 七十里ヲ奔走云々
廿九日 朝 芙蓉山人来 長
 談空腹後 御長屋に而拝謁
 午後下山織之進御後をしたひ
 来着夕 青山氏来訪
六月朔日 風邪平臥
 三上 遠藤 藩医師
二日 小雨 中午後中島、古川
 筧を訪 同家ニ泊
三日 青山 太郎館 師家ニ至
六月二日
 教意施行大略
 一大綱五六ヶ条
 守るへき件々
 戒むへき件々
 右
 御宸翰 伊勢
 神宮 御告の上御施行
 可相成事
 一大綱の正義一篇
 右輔相公御編撰可被成候事
 
 
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一神拝式之事
 聖上百官毎朝
 神拝可被為在候事
一葬式の事
一祭式之事
 右上下の礼制編撰
 可相成事
一暦法改正之事
一教官人撰之事
 且定員之事
 
 和漢西洋学之学ニ達し
 人情世態錬熟にて
 人の惑ひを解く尓足る
 者教官尓補せられ度
          事
一教官依る所の書
   古事記
   日本書紀
   万葉集
   孝経
   論語
 右人事治道の切実の
 
 
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 語取捨編撰教官
 江配与之事
 一異宗門人民御所置の事
    ○
  疑問
 古事記
○天地初発之時
 書記
○古天地未剖陰陽不分
  何レニ従フベキヤ
○高天原 天
 
  何レノ所ヲサスヤ
○神
   字義
○天御中主神
  造化ノ主宰ナルヤ
○高皇産霊神
○神皇産霊神
 三神合テ造化主ト解ヘキ歟
 又主宰ハ天御中主神
 ニテコノ二神ハ其功用ヲ施シ
 玉フ補翼ナリヤ又三神
 
 
9     原本へ



 造化ノ主宰ナルヤ
 朝廷ニテ重ク御祭祀ナキハ
 イカゝ今日伊勢神廟ヨリ尊
 キ神マシマスベカラサル固ヨリ
 ノ事ナレハコノ三神ハ御祭ナク
 テモ宣シカルへキ歟 神魂帰着
 ノ義ニハ大関係ノ事ナレハ最第
 一ノ大事件ノ論ナリ
 ○隠身也
  此形人体ト同シキ哉今現高天
  原ニマシマスヤ
 ○天神系統
 
   古事記ニヨルへキカ 書記ニヨルへキカ
 ○伊弉諾尊 伊弉冊尊
 二神国ヲ生山川ヲ生ノ説如何 海
 外ノ人此説ニ服スへキヤ外国ノ
 服スル服セサル関係ナキヤ唯恐
 ラクハ宇内ニ及ハシメ疑ヒナキニ非
 ズハ
 皇国ノ人ト雖モ服スへカラサルニ
 似タリ存シメ論スヘカラサルモ
 ノ歟如何
 ○日神
 古事記書記ノ説簡易ニ偏シメ人々
 聞取ヨクセサレハ 御功徳ヲ解クニ
 
 
10     原本へ



 要領ヲ得難シ又海外万国ニ拡充
 シメモ間然ナキニ非レハ唯
 皇国キリノ説トナルヘク今日格物窮
 理ノ学行ルレハ皇国ノ人ト雖隘
 狭ノ説ニテハ疑ナキ疑ナキ事能ハス
 疑ナキコト能ハス疑アルモノヲ以テ教
 トスルハ誣トスルニ近シ高明正
 大ノ説ナクンハ
 皇国ノ大道タゝサルニ似タリ如何」
 
 芝ハマ松丁二丁目 前島氏
 上総屋吉兵衛   喜多氏
 
 同夕東京府ニ青柳を訪三輪
  田同酌 後三輪田を訪
  丸山作楽同会
 四日小雨中中島ニ至宮
 和田又四郎ニ泊
 五日 中島氏ニ至横山大脇
 同邸ニ来後師家ヲ番
 町ニ訪 権田をスタ丁ニ
 問前嶋木田小路ニ会
 翁と同伴ニ而松岡を訪
 不遇 筧を訪 中島ニ至
 両士不来スタ丁に泊
 
 
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     大こくや注文品
 右附両国
 一大根の縁突
五月九日    福しま
 一弐分弐朱    もゝ引
六日 小雨 昨夜より風邪、朝雨中
 両士来 ■平臥中
 鳩居久兵衛 市兵衛来
        今日多勢子着と云
七日 小快小雨 猶平臥 市兵衛来
 今朝大脇面会済云云
八日 小雨
 小川丁錦小路ニ鳩居母を訪 ニ葉
 
 丁ニ三輪田を訪 苗木邸ニ
 青山を訪 帰 拝謁
九日 けふ者神縁日なり
 とて人々詣参て念
 珠つまくりつゝ六根
 あるハ心経など唱ふ
 をきゝて
 世の中尓うれしき物ハ(何ハあれとも)
 商したり神を仏尓
 うるかワひしさ
    又
 
 
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 世の中になにはあれ
 どもことさえて えみ
 しを人尓するか
 うれしさ
    又
 神のうむ人をえみしに
 するかうれしさ
 隣屋鋪遠藤但馬守
 殿に柳田医師を訪
 ふニ不遇 今日病又
 
 発
九日 晴 隣邸医師来
 田中氏青山氏来 芸の演
 ニ酒のミ帰 同日永井兄弟来。
 久々里邸ニたせ子ニ逢
十日 晴 病中
 上野小杉後室来云々
十一日 晴 乙葉大進来
十二日 晴 隣邸たせを訪
 昼さけ
十三日 曇 乙葉来
 
 
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十四日 小雨 須賀祭り中
 市兵衛同伴中島ニ至
 夜中日本橋より駕籠
 ニて帰
十五日 小雨
十六日 晴 横山氏同伴浜
 辺遊歩
十七日
 一 久々里邸昼酒
十八日 晴
一多勢子同伴二葉丁美和田
 を訪後同伴ニ而東京府ニ青柳
 
 宮和田を訪 渋川氏来、酒あり
十九日
 一多勢子を番丁に訪小川丁
 宮和田ニ至 千葉氏来会
 後中島氏ニ至 愉快談
 あり くれて帰
廿日
 一 風雨を犯して仏暁中
 島ニ至。安産混雑ニ付
 夕かた面会雨中帰
 此夜福島より勝野礼蔵
 来 夜中談判
 
 
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廿一日 晴
 一たせ来尚昨夜ノ談示
 昼後田中氏 角田来
 七ツ頃より多勢子市岡
 氏 同伴、昌平橋行
 深更駕籠ニ而帰 今日
 横山氏 不快之事有品川
 行 大脇 白州 後より行
廿二日 晴
 横山氏不帰 為見舞行
 三田高繩界にて逢。海
 月庵ニ大 白 両士を待
 とも不来 黄昏高繩
 
 南あずま屋に至、青楼
 より両士来 義論沸
 騰終ニ三士と共ニ夜■(中)
 帰 増上寺出火あり
廿三日 晴
 久々里衆と共ニ舟ニて
 隅田河を逆上る
  都鳥をミて
 むかしより鳥やしりけん
 すミ田河すめハ都の名ハ
 たちぬとは
 
 
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          多勢子
 すミよしとおもひあかりて
 ミやことり
 すミた川都の鳥の名さへ
 うらめし
   梅若塚尓至りて
 かなしくも露と消にし
 ことのはの千とせ耳かをる
 梅わかゝ塚
  今日同遊連名
 小島 市岡 櫛田 水谷、たせ子
 市兵衛なり いとおむかしく
 日頃の心やり尓なん
 一 今日若旦那馬来
   これ迄は借馬ニて少々わ不足と
   おほしけん
 一 昨日宮地氏再ひ着論
 再発
廿四日 雨ふる
  酒あり 上田治馬来云
 昨日肥前草奔両人
 岩倉殿へ参上義論
 権田翁来、
 職制御改之由珍重之
  此日病中 法書を貰
 
 
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廿五日 雨 不快
廿六日 雨 〃
廿七日 雨 〃
廿八日 雨 〃
廿九日 小雨 今日より九段坂
 上ニ戦死招魂祭有之
卅日 曇 金杉虎岩
 を訪 たせ子 市兵衛同伴
 神明前六月祓
 
七月朔日 小雨
二日 快晴 若様御供ニ而
 筑地ホテルに至一覧後
 白魚丁ニ至
三日 快晴 九段坂上ニ
 戦死招魂祭あり
 角力一覧此日も
 若君御供なり 夕
 かた中島行
 
 
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四日 晴 船にて 洲崎弁天
 八幡宮詣■此日昼後
 より九段ニ花火昇招
 魂祭之為也と云 夜中
 舟中より望 同舟連名、
  若 三村鹿六 久々里市岡
  櫛田 水谷 僕
  たせ子や食のためなり
五日 晴 水天宮詣
六日 晴 横山 林 茂平
 と同伴 浜ニ午飯
 
七日 晴 市兵衛同伴二葉
   町三輪田行
八日 炎暑中 [たせ子 中島ニ至]市兵衛
 同伴浅草より東叡山
 下を過神田に詣午頓
 古川を訪 夜中
 番丁ニ権田を訪ニ不
 遇 スタ丁ニ至旅亭ニ
 逢、一泊、画師成瀬雪湖
 同宿是ハ権田翁里人
 
 
18     原本へ



九日 晴 井上来会 [三輪田 たせ中 嶋行]
 権翁と共尓番町ニ至三輪
 田宇佐美来会有酒
 一泊
十日 晴 朝 筧を訪権翁
 と共尓三輪田を訪、此日
 権翁 たせ 筑地 沢殿ヲ訪
十一日 晴 園田市兵衛と離
 盃を汲
 なき人の世にしありなは結ひ
 にし えにしの いとはとけ
 さらましを
 
 かへし     信久
 むすびにしえにしの糸盤
 きるゝともつきでたとらん
 いにしへのミち
十二日 晴 たせ来りていふ
 市兵衛岩異県尓友垣
 ありて明日なん行かんよりハ
 平田の大人の御許に仕へ奉り
 てはいかにいふ尓 うへなふ
 此夕より市兵衛久々里邸ニ
 いたり泊
 
 
19     原本へ



十三日 大荒風 所々ニ而家
 塀倒る
十四日 晴 払暁中嶋行
十五日 晴 小山忠太郎 倉沢
 誠一郎来 平井良造来
 夕かたより 中島行
十六日 晴 今暁たせ子中嶋行
 田中盛助 虎岩省三来
十七日 晴 今暁多勢子中嶋行
 夕かた大脇氏 福島行
 此日 久々里岩佐儀兵衛殿
 来
十八日 小雨 御嶽大神祭札
 夕かたよりたせ中嶋行
十九日 晴 ■ 若殿福嶋へ
 発駕せんとして止 夕かた
 より 岩佐発駕
廿日 赤羽根ニ而書物買
廿一日 晴 十九日 鎌倉宮へ
 勅使       北小路 殿
 
 
20     原本へ



 三輪田氏発駕と聞て
 参詣セんとて出たつ
 市岡 櫛田 水谷 たせ
 小嶋女 おつよ 市兵衛 手前
 己はかり発して神名川
 大米屋に泊
廿二日 晴 戸塚いせ屋ニ休 江の嶋
 恵ひすやニ泊
廿三日 曇 弁才天ハ巌嶋神
 と改りて いとすか/\し
 下 中 上 奥の宮ニ詣
 
 西のかた尓ふしをミて
 浪の上尓不二の高根を書
 そへて たか筆とりし江
 の嶋のうら
 七里か浜いとおもしろく行
 /\て鎌倉宮ニ詣 今日御祭礼
 大君丹刃むかふ敵アり退け
 て志つまりゐます鎌倉宮
 大塔宮むかし此所にすませ
 しと石室奥にありて
 いとかなし
 八幡宮 鳥居前ニ泊
 
 
21     原本へ



廿四日 雨ふる 金沢ニ休て
 金沢の睦浦のはまのむつれ
 ツゝ遊ハんものを雨はふり来ぬ
 関むら迄至て日暮て泊
廿五日 曇 神名川ニ至頃
 英王子 浜殿に至る日なり
 とて人々見ニゆく此浜
 より舟ニ乗りて川崎裏ニて
 日暮 忍はかり高繩ニ着
 千村邸ニ浴して寅過帰
 邸
 
 急よしや丁 おしろひ [えり かほ]
 くし二ツ三ツ 本石四丁目幸手や店ハ
 たはこ入
 大小 つか袋
 本町通二丁目 大中庵
 金龍丸  金壱朱
     松井様
 
 
22     原本へ



五月八日 吉日発
 一 金拾六両  宅
 一 札四両
 一 銭六貫六百文
 一 金弐拾五両 松井様
 一 同札百両 [青山より かり入]
 一 同札五十両 横山様渡
    四十五両にし 急々□取
     横山氏より受取
六月廿日
 一 弐両     茂平
六月晦日
 一 弐両     [単物之節 横山氏より]
七月十六日
 一 壱両二分   [中嶋行 之節]