権現様の馬駆け

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 十六日は、権現様の馬駆けの日です。それぞれの農家では、自分の家の農耕馬を美しく飾り、紅白の手綱や、フリルの附いた前垂のようなものや、家紋を染めぬいた腹掛けや、たくさんの鈴をつけて、貫井の「ねの権現」に参詣するのです。多額の費用をかけて、きらびやかに飾った馬は、馬方がひっぱって境内の観音堂の廻りを駆け、普通の飾りの馬は若い衆が乗馬したまゝ、大門と本堂との間を駆けるのです。近郷近在から集って、馬の労働を感謝したものか、それとも権現様に忠誠を誓いに行ったものなのでしょうか。

(明治三七年生れの長兄の記憶による)