捨て子

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 「陽気も良くなった事だし、八番目に生れた赤ん坊も数えの二才になった。そろそろ、この子を捨てなければ……」
と、四十二才の母親は赤ん坊を箕の中に入れて、前の畑の中道に置き去りにしたまゝ、後も見ずに家に帰ってしまいました。
 卯の花の咲く木蔭で、一部始終を見ていた新兵衛さんのおばさんは、早速その子を拾いあげて自分の家に連れて帰りました。
 これは「両親が四十二才で、その子が二才の場合、子供は丈夫に育たない」と云う昔からの言い伝えがあったので、その為に一度赤ん坊を捨てて、厄払いをしたのです。
 赤ん坊は拾い親のおばさんが、あらかじめ用意して仕立てて置いたメリンスの花模様の着物を着せてもらって、生家に戻された事は云うまでもない事です。