祭りの後片づけや、がっかり正月など、都合五日間もついやした八幡様の祭りも終り、武蔵野の静かな夜気をふるわせて虫の音がすだく頃、十五夜様が訪ずれて来ます。旧暦の八月十五日の夜は縁側に出した膳の上に、米の粉をこねて作った十五ヶの団子や、裏庭から採って来た柿の実や、里芋、栗などをお神酒と一緒に供えます。又、昼間子供達が原っぱで採って来たすすきや、赤い小さな実をつけ、酢っぱい味のするしどめや野菊を一升瓶にさしておきます。大体丸みのある野菜、果物を供えるのですが、唯一っ例外として、四角い豆腐一丁も供えるのです。何でもこれは、非常におしゃれなお月様が、各家毎に訪問した時に、このなめらかな豆腐を鏡にして、お化粧をするのだそうです。
この日に限って子供達にはお月様から特別のお許しがあって、隣りの家の月見団子をこっそり頂いても、前の家の柿の実を黙って頂戴しても良いと言うことで、悪童連中はグループになってスリルを味うのです。
月は欠け、やがて新月となり、次の十三夜の宵は、十五夜様と同様の供え物をします。その頃になりますと、虫の音も心細気になり、着物の衿をかき合せながら、皆でお供え物を頂くのです
片見月と言うのはいけないと言う事で、十五夜様をしたら、必ず、十三夜様もしなければなりません