裏庭にある数本の柿の木の、梢に残る赤い実にモズが啼くと、そろそろ麦蒔きの準備も始まり、七、五、三も近づいて来ます。
霜月の十五日、開校記念日で休校の子供達は、一日中八幡様の境内で過すのです。社には、朝から神主さんや氏子総代のおじさん達が詰めています。初めての女の子や、跡取り息子のお祝は何と云っても盛大で「今年は、何処そこのお祝で餅をたくさん搗いたそうだ」とか「蜜柑も投げるらしい」と、子供らは互に情報交換しながら、お祝っ子が来るのを待って居るのです。
八幡様の境内には、三十貫〆だの、四十貫〆だのと重さの刻み込まれた卵形の石が、何個も転がっていました。これは昔の若い衆が、力自慢で持ち上げた重量を記念して、八幡様に奉納した「力石」です。子供達は、その石の上で「セッセッセ」で遊んだり、綾とりしたり、多勢の友達と「開戦ドン」をしたり、「お祝っ子早く来ないかなぁ」と、首継地蔵様の方まで見に行ったりします。