練馬区中村が、戸数六十戸程の農村であった昔から伝承されて来た諺、おまじない、民間療法、農村言葉を書いて見ました。
しかし中村だけのものとなりますと、方言にしても純粋なものは、さて?と言う事になります。農村言葉は、江戸近郊と云う事で、そのせいか、ぶんなぐる、ふんじばる等接頭語のつくものが多く、又、関東のベェ/\言葉も目立ちます。近村と同様に、おまえ様を、おめえ様の如く、【ま】を【め】に、かえり道をけえり道の様に【か】を【け】にする等、少々なまったものを入れますと莫大となります。
今でも使っている言葉もあり、すでに忘れかけた言葉もあります。
何時でしたかTVドラマの「父子鷹」で、勝海舟の父親の話し言葉が、アクセント等、昔の中村言葉と可成り良く似ているので、生前の祖父(嘉永三年生れ)を懐しく思い出した事がありました。
こゝに収めましたものは、大正十二年生れの記憶ですので、先輩方皆様の古い思い出を重ねて、中村の伝承がより正しく残されることを祈っております。
昭和五十九年三月二十一日
みぞれ降る日
菅原シゲ子