2.明治7年4月20日

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廿日出御書状廿二日着、御こまやか様
戴き、有難/\拝見申上奉り候、
君益御機嫌よく入せられ候との御左右
伺、ま事/\有難御事、安心致まいらせ候、
扠度々御いそかしき御中より御書状
戴き、御請差上す様仰戴き候所、
此方よりも当月三日・同一二日・同十七日御便り
差出、御請(※1)不申上所ニハなく、節々
申上候つもり、すで十七日出申上置
候通りの事ニ而、御便り着候と御上包
引さき候程いそき御帰りの御左右やと
拝見いたし候所、毎も/\御帰りの
御左右伺不申、私の心中御さっし被下候、
行届ぬ私、とふそ御留守中、人様
御わらわれ申ぬよふ御留守番致たく
と存、私の心一ばい気を付御留守番
いたし候間、その所御あんしん願上候、且私も
日増身おも相成り候へ、長々の
御留守中実心細く、何事もうち
わすれ、御帰りの御左右計御待申上、
待くたひれ、心中御さっし被下候、
だん/\月も重候へ、いろ/\御相だん
事も御座候、今日の御便りニ而ハ御帰り
毎(いつ)の事やら知れ不申、がつかり致まいらせ候、
たん/\知れ候様成り候ゆへ、近所(※2)
御新造たち歓くれ祝儀申くれ、
旦那様も御留守中、御母様も御出なく、
さそ/\おこまりと、ま事よく何か
おしへくれ、夫飯田さんの御新造
昨今こし候へ共、ま事深切の御人ニ而
/\何か/\よくおしへくれ歓候
御座候、夫もはや来月九月(※3)
も成候間、何時の事も知れ不申、
御留守ニ而ま事心ぼ(そ)くまくり(※4)
いかゝ致置候事や、玉村おあいなぞ
木薬やニ而かい候よし申候へ共、もはや
とゝのへ置候物ゝかい可申哉、
小達(※5)ニ而もらい候方宜哉、又
当り月迄宜事候哉、御帰りが
余り御おそくゆへ気がもめ候て
成り不申、御相たん申上候、呉々も
十七日出いろ/\申上置候事ゆへ
とふそ御吟味願上候、尤十七日比白川と
仰戴候へ、矢張越堀宿名宛にて
出し置候事御座候、花色糸の御事も
仰戴有難、実さっぱりと手切
相成り候ゆへ、十日計前五十疋分
とゝのへ候所、ま事少くゆへ、ま事/\
有難/\/\御礼申上候、并此ほと
一寸御帰りの節、塩かま御持参戴き
御立後人様ほめられ、四本御座候
のを大切仕まい置候所、よぎなく
弐本人様上ケ、一本内でひらき、
もはや一本成御めん遊し候、あの
よふ成風味余りなく、私も
戴たくなから、一寸手入がたき
御菓子ゆへ、大切仕まい置候へ共、
どふそ御帰りの節、御とゝのへ御持参
の程ひとへ/\願上候、呉々も
糸有難/\/\御礼申上候、もはや
待請とふそろへ置候へ共
君の御留守こまりはてまいらせ候、私
目もおふき宜、御あんしん被下候、
何も/\君御丈ぶ様とさへ伺候へバ
 わたくし心落付候事御座候、
くれ/\も一時御早く御帰り願上候
まん/\年々  めてたくかしく
   なを/\  めてたくかしく
    四月廿 出 日出
 
     御請かた/\
旦那様 申上     つけ
     人々御中

※1 御請…手紙の返事

※2 近所…敏克夫婦の住居は四ッ谷尾張町、前広瀬藩の御長屋。

※3 九月…妊娠9ヶ月の意か。

※4 まくり(海人草)…新生児の胎毒を下す。

※5 小達…つげのお産を手伝う産医。