9.明治7年5月4日

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五月一日出御便り四日着、御細やか様の
御書状拝見、実恐入/\、有難/\/\/\
拝見申上候、御道中いかゝ哉、東京
昨朝より大風、夜に入、夜中大風雨、
日々のよふ雷いたし、何かきみのわるい
御座候、
君ます/\御機嫌よく御勤戴候
御事有難/\/\、ま事大安心御座候、
扨廿六日出、廿八日出、廿九日出、五月一日出
御書状不残着、繰かへし/\/\拝見
いたし、ま事恐入/\/\、真平御めん
あそし願上候、全く女心ニ而、大切/\の
旦那様御腹御立せ申て済不申、
折ふし女今川出し見、天よりも高き
旦那様御一所居、御しかられ申いく
らでも宜候へ共、長々の御留守中まして
昨今の私、とふそ不調法のなきやう
御留守番致たく、私ゆへ
旦那様の御いわれ遊し候様成事出来
候て成不申/\と存つゞけ、余り
長々相成り、何と仰越せられ候ても
あんしられて/\成不申所へ、御腹
立の御書状、とふ致したらよかろふと
存込、夫ゆへつい/\ふさぎ込、御便りも
着不致内、もとより佐藤并永田様へ
たり共、其様成事御咄し申事いや/\
ゆへ、外致方なくゆへ、とふそこれ
ほど大切存込居候所、とふ致候事や、
とふそ私の心中夫の方へ届き候様
観音様へ相願候事座候、もふ/\
四度の御書状ニ而むねも腹もま事
落付、ふさぎの心どこへ参り候哉と
存候様、心持よく相成り、昨今御膳等も
おいしく相成り、心持よくま事ひどく
うごき候様相成り、御用中へつまらぬ
御苦労相かけ、真平/\御めん遊被下候、
もとより近所の者見舞参り候とて
ヶ様の心配の事なそ毛ぶりも出し不申、
時かふ不順のせいと計申置、峯さん并
いそたり共、毛ふりも咄し不申、峯さん
初の御手紙御承知うへ何と思召候哉、
いそとても毛ぶりも咄し不申、是程存上居候
旦那様の事、有難い/\とのじまん
度々いたし候へ共、ヶ様成事咄候事
いたし不申、是迄の御書状あけすてなき
と仰戴き、何共/\有難/\/\、私こそ
余りいろ/\の事申上、御腹立御帰り
後さとうへても御咄し遊でも致候
いかゞ可致と又心配の所、追々の御書状
ぶり、ま事/\有難/\/\、もふ/\私の
さつはりと落付、有難/\/\精々と
いたし候間、とふそ 君も御かんへん
被下、此義是きりひとへ/\願上候、
呉々も跡から/\ぐと(くど)/\申上、真平/\
御めん/\願上候、何れ御帰りのうへ御咄し
申上候へ共、近所もいろ/\の事御座候
ゆへ、私のよふ成有難旦那様持候人が
有かと存候へ、天共何共有難/\、左候へ
長々の御道中あんじられて/\成不申
なから、つゐ/\気ぶん不宜なそにて
御そゑんいたし御苦労相かけ、くれ/\も
御めん/\願上候、尤寝あせ先月初
比より初り候事、只今を以さつはり致
不申ゆへ、湯へ久々入不申用心致し
居候事御座候、明日 君の御延(誕)生日
兼て 御母様より伺居候まゝ赤の
御膳等いたし御祝致可申と存居候へとも、
君御留守の事ゆへ、御帰りのうへと存居候へ共、
有難御添御書状戴候間、御肴とゝのへ
戴、御祝御帰りのうへと可致、御目出たく/\/\、
乳の事まて御あんし戴、ま事神事と
そんしひつくり致ほと大きく相成候
間、御あんしん被下候、佐藤も免職相成
とふそ四ッ谷辺へ参りたく、とふか御屋敷
御明長屋や有ましく哉と、賢次郎頼
参り候へ共、家内心中も御存の通り余り
成候いや、杉の御長屋も明居候へ共、
君の御留守中さ様成懸合出来
不申、かた/\御明御座なくと申て断候
御座候、付ても私の様成者ヶ様
思召戴候と何と申有難御事哉、
勿体なく/\/\、有難かり/\/\まいらせ候、
何も/\御帰りのうへ山々御わひ等
申上候事御座候、此御時節
君御りつば御勤戴候御かげを以らく/\
暮し候事ゆへ、御留守番との様にも
大切致候間、御用済のうへ一時も御早く
御帰り願上候、玉村おあい(※1)参り自分
事九ヶ月ニ而生候よし、大切と申候間、此程
何時も知れ不申と申上候へ共、此四五日
ま事腹合宜ゆへさ様にもあるましくと
有難/\/\、とふそ御帰りのうへ心丈ふ
相成り、生れ候様致たく願上居候、私の
心、 君御帰り成候と先宜とそんし
候せいか、心やわらか相成り、夜分も覚
なしふせり候所、御留守相成り候と、
がたりと申ても目覚、夫よりおきつゝけ候
やう相成り、こまり/\まいらせ候、此ほと
御すしこしらへ候節かんひよう取候所、
/\/\高直/\/\、ひつくり致候やう
ゆへ、御せわ/\しき御中恐入候へ共、御帰り
節御とゝのへ御持参願上候、しい竹ももはや
少々相成り、相叶候事ヽ是も
御とゝのへ願上候、今日昼後一日出着、
御請申上たくと認かゝり候所、跡から/\
人さま御出、認候間なくゆへ今ばん認候
御座候、御帰り御便り御待申上
暮しまいらせ候、春の桜等詠候て暮し
候様仰戴、もふ/\御書状有難/\ゆへ、
も不及庭ニ而沢山慰居候事
御座候、万々々々年 めてたくかしく
   なを/\めてたくかしく
   五月四日夜認
  ヶ様認候所、昨はん寝あせ出不申、此分ニ而ハ
  もはや宜とふそ/\御あんしん願候
 
     御請かた/\
旦那様へ 申上     つけ
     人々御中

※1 玉村おあい…御長屋の主婦仲間