御道中はいかゝ哉、東京ハま事ニ御寒く
朝なぞハ足袋はき候様ニ御座候、
君ます/\御機嫌よく時かふの御障りも
あらせられす候との御左右伺、ま事ニ有難/\/\
大々安心/\/\致候、扨八日出御書状十日夕
八時比着拝見、御発句ニ而ま事ニ心精々と
いたし、有難/\御嬉しく存上候、私も
とふそ一句と存候へ共、とふ致候ても出不申、
君のを其まゝ戴候、
封きつてふさきし心
とこゑやら
とふそ御直し願上候、私の心ハ旦那様より御書状
いたゝき候程嬉しき事は御座なく候、御衣類ミな/\
損し候との御事、御尤さま/\/\、夫是先便ニも申上候
通りま事ニきがもめ候間、一度御帰りヲ祈々
居まいらせ候、私事申上候程の事ニもなく候へ共、
十日夜ニ少々腹合あしく外の事共ちかひ
余儀なく此度ハ小達ニかゝり薬もらい、夫ゆへ
八日出御請遅り御めん被下候、腹ハそんなニ大き
くもなく候へ共、小達・いわひ共ま事ニよき御身入と
申くれ候、御安心被下候、其せいかま事ニひとく
うごき、きみのわるいよふニ御座候、とふそ/\
当月中ニせひ/\御帰りヲ厚々祈居まいらせ候、
実ニとんな深切成人参りくれ候とも
君ニ御心ヲ添て戴候わけとハとふしても并
不申、心中御さつし被下候、白川ハ御覧場所も
あらせられす候よし、御きの毒さま、猶更御早く御帰りヲ
御待申上候、峯さんへ上候品も早束御返事戴き、
直ニ上候事ニ御座候、御衣類等旦那様御身廻りの
事人ニ頼候様成事ニてハ家内の役か済不申、
大きんもつニ候へ共、御道中ニ入せられ候内はま事ニ
致方御座なく、御跡の御よごれ物ハ其まゝ御つゝ込
御帰り願上候、たとへ只今出来不申様成候ても
冬迄ニハとの様ニもいたし候事ニ御座候、御かけさまニ而私も
丈ふそふニ候まゝ、生落としさへ致候へハ身がるニも成
候間、との様ニも廻し候つもり、手なべさけても
主の側、たとへの通り苦ニハ成不申候、くれ/\も
御留守番ハとの様ニも大切ニ守り候間、此度は
とふそ御寮(電信寮)の方へも御さいそく被遊戴、当月中ニハ
せひ/\御帰りヲ願たく祈居まいらせ候、
一此程一寸御咄し申上候佐藤儀、自分方ニ而さがし
大きと(大木戸)辺へ家ヲもとめ、廿日比ニ引移り候よし
昨日賢次郎参り咄しニ御座候、当日ニ大きどの
方へにしめ・御むすひニ而もこしらへ遣し候と存居候、
とても私ハ参られ不申、断候つもりニ御座候、
実昨今ハ内のうちさへかけてあるき候分ニハ
不参様成候間、とても参り手伝候分ニハ不参、
断候つもりニ御座候、何も御請迄、早々 めてたくかしく
なを/\めてたくかしく
五月十三日出ス
旦那様へ 申上 つけ
人々御中
人々御中