12.明治7年5月14日

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 十一日出書留御書状、十三日当方よりも御便り
 出し候後、二時頃着、有難/\/\拝見申上候、
 君ます/\御機嫌よく入せられ候との
 御事伺、ま事有難/\大々安心いたし候、
 扨十一日出拝見、嬉しい共有難共何とも
 申上られす、こんな思召て下さる
 旦那様があるかと存、たまり不申、人目も
 御座候間、雪隠かけ込候、心中御さつし被下候、
 仰被遣候通り東京も御同様、もはや桜も
 葉成り、御歌もよく/\拝見、ま事拝見
 いたし候程御歌の通りに御座候、扨段々
 御安事戴候御心中御細やか様仰戴き、
 実を以有難/\/\/\存上奉り候、只今を以
 きうに不廻りと仰越せられ、何と申事や、実
 当惑いたし候、段々かんかへ候得、世間ニハぶら/\
 被成候御人も沢山、其代り内火の車、夫是
 存候へ、私かれ是申て済不申、君の御光り
 計てヶ様人々も立られ、又御留守ニ而
 君の御光りてとふか成と存て居ませふと存、
 直其心とこへか参り、御留守生れ候様成候
 たら、とふ致そふと心細く成、たまり不申、又
 是迄仰戴、君も御安事被下候物、ま事
 致方なくと又存、小達来月十日過、いわひは
 廿日過も御成遊し候哉と申、ま事御身入
 御宜ゆへ、御延ニハ成ましくと申候、此うへ致方
 なく、とふそきうに御早く廻り候様信心のミ
 いたし候事御座候、何と仰戴候ても心細く
 御座候、
一まくりの事、乳の事、うぶけの事、
 いわひへ遣し物の事、赤飯其外料理
 の事、私さん所居候事、もやうし
 候ヽ岩井へ申遣し候事、宮参りの事、
 一々御懇様仰戴候御事、実を以/\有難/\/\、
 一々有難かしこまり、もし/\御帰り前
 出産有之候ヽ、七夜小達と岩井を
 呼可申哉、其節の御馳走いかゝ致へくや、
 此両人帯祝の節の様致さね成不申候
 もの候哉、此段伺たく候、跡せわ成候人々へ
 わたくしもうごかれす、もし/\
 君も御留守候て、たべさせ候人なく
 ゆへ、其所よく/\断、君御帰りのうへにて
 皆々へふるまひ可申と存居候、夫ニ而宜哉、
 是も御序御伺せ被下候、御出張御用中より
 ヶ様仰戴候、海共山共有難/\/\存上奉り候、
 もはや今日も嶋崎御新造頼遣し
 可申と存居候、永田・さとうよりも直参候
 間、ゆふ(郵か)ニ而申越候様申呉候へ共、何れも様子
 の知れぬ御人計ゆへ、まつ/\目宛頼候は
 嶋崎・安藤致置候つもり御座候、雇女の
 事迄も仰戴、何共/\恐入/\候事御座候、
 此程も石川の下女、切米当年の七両二分
 とか申事承り、いそ事留候て少しも増すと
 もしや存候哉なぞと存、御すか様御事昨年
 七両なら猶更と御申の所ゆへ、気かつかぬ
 よふ思われ候てもいかゝと存候まゝ御相たん
 申上候、内で外の事が其様遊し戴御座
 候間、宜筈なから世間ていわれ候事でも
 御座候て、君の御気性と申残念ゆへ来年
 付二分もまし、七両遊し戴候ていかゝ哉、
 夫君御留守ニ而私ま事こまり、たひ/\
 夜分なぞもおこし置候事も御座候へ共、
 ついわるい顔致候事もなくゆへ、かた/\御相談
 願候、御帰りのうへ致可申哉伺候、
一岩井事申候も、私さへ御早く参り候へ御請合
 申候間、御安心/\と申くれ候事ゆへ、其時の
 様子寄、仰の通り壱両も致へく哉と
 存、様子次第いたし候事御座候、ま事よき/\
 御腹と申呉候間、御安心被下候、早くうみ落し
 君御安心御させ申たく、夫のミ楽しみ、御帰り
 御待申上暮まいらせ候、男女の所ま事致方なく、
 気をもみ候事やめいたし、只々十人並
 願上居候、若々御帰り前出産候ヽ、いけ物(いけ花)の
 方角いかゝの物候哉、其時成被下候方御まかせ
 申候て宜哉、夫是御留守ニ而ま事心配いたし候、
一宮参りせひ/\御帰りのうへ、衣類等
 宜の沢山御座候間、あれニ而沢山御座候、ふたんの
 ゆかた皆北沢へ上ヶてしまい、只今成こまり居候、
 君二月御立の節、ゆかた御帰りのうへ新方
 こしらへやると仰られ御立ゆへ、楽しみ致居候所、
 只今を以御帰りなく、もはや此節私いそ共
 手明成候まゝこしらへ置たく、極麁末のを一反
 とゝのへ可申哉、是も伺候、
一又申上候、御国より神山氏御用ニ而御出の由、大分
 所々よりいろ/\参り候様子候所、内ニ而ハ只今迄
 つき合候御人候哉、とんと様子知れ兼、いかゝ
 可致とかんがへ居候所、其内永田様御出、只今
 神山へ参り候へ柳澤様へも上り候筈なから
 御留守ゆへ上り不申、宜との御言伝ゆへ幸ひ
 永田様へ御相たん致候所、今日なそも所々より
 いろ/\参り、其御馳走成候まゝ、内よりも
 惣ざい物御かう/\の様成物折ふし
 送り候方宜と御申ゆへ、此程よほと念入
 候て御すしこしらへ上ヶ、其後御かう/\上候
 事御座候、何れ御帰りのうへ上るとの事御座候、
一段々仰戴御書状ま事有難、軍中ニ而
 御出産被遊候御方様もあらせられ候との御事
 なから、とふ致候ても私そふ思われす、心
 ほそく/\、一心御帰り祈/\/\参らせ候、私
 名字大そふ成字遊し戴、初ての節よほと
 かんがへ余り御りつば過、恐入/\候事御座候、
 何も/\御請迄、用事のミ申上候、日増身おもく
 別して御分り兼、御はんし願上候、
             めてたくかしく
      なを/\万々年めてたくかしく
       五月十三日認置 十四日出ス