14.明治7年5月20日

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 十八日出、只今着、御書状有難/\拝見
 いたしまいらせ候、御道中いか哉、御当地は
 時かふま事あしく、所々病人たらけ
 御座候、
 君ます/\御機嫌よく御勤戴候御事
 委しく伺、何寄/\有難/\大々安心/\、
 実十一日出ぎりゆへ時かふもあしく、日夜
 御あんし申上居候所、御一筆ニ而も戴、誠/\
 安心/\、胸がすき、有難かりまいらせ候、さて
 十八日出拝見、御用多入せられ候よし、
 左候ヽ定めし御廻り物着の御事と有難/\、
 十九日出御返事伺候よし有難/\/\、
 三日めニハ着ゆへ、明日伺候御事と楽しみ/\
 居まいらせ候、私事薬初候後腹の痛も
 さつはりとなをり、ま事気分よろしく、
 此節夜分も随分よくふせられ有難/\、
 近辺の御新造たち申候ニハ、ま事御懐妊
 中の様成御様子少しもなく、よい御顔付、
 御色つやなそも御ふだんの通りと申くれ候
 まヽ、ま事/\大仕合有難/\、御安心/\/\
 遊し被下候、此様子ニ而も子供も丈ふと
 有難/\/\、御安心/\被下候、此程伺候御召服
 の御返事、御早く御きかせ願候、さそ/\冬の
 御服ニ而御こまりと、きがもめ/\暮しまいらせ候、
一扨御用多の所へ御あんしゆへ申上たく
 御座なく候へ共、私もま事心配ゆへ申上候、
 峯さん御事、常々只々御気ぶせうと
 そんし、つゐ/\御為成ぬと存、御世話も
 やき、中ニハ気のみつかい事も申候へ共、全く
 御心中御よわくゆへの事と相見、又此節
 脚気御初り御わるく、昨年の師(下)医(上)ノ遠田(※1)
 御かヽり、御上り物尤あづきむきの御膳
 計り致し上居候へ共、ヶ様まい年御わ
 づらい続ニ而ハ御からたたまり不申と私も
 心配いたし候、御けいこも先月末より宮嶋殿
 とうじ御出のよし御やみ続、尤此節は
 脚気ニ而寝たりおきたり計ゆへ、私申候ニハ
 御気分御宜節少し充御うんどうなさい/\と
 御世話やき候事御座候、賢次郎参り申候ニハ
 あわ嶋きうが宜と申候へ共、いかゝ哉、峯さん
 に不申候へ共君何と思召候哉御相たん
 申上候、賢次郎申候ニハたとへとの様
 御留守の御事気を付上可申候て成不申所、
 其うへ私厚御恩も御座候事ゆへ、峯さん
 御かけん御わるく候ヽ、足位で御用のたり候
 事いくらでも致上ると申、脚気ニハ御土蔵
 なぞへ参り候事極わるくと申、昨日参り
 御土蔵へかや出し候手伝参りくれ候様成
 御事御座候、此程いろ/\君より仰戴候御事
 宮参り迄の事細々申越くれ候と申咄し
 候へ、あなたの様成御仕合の御人御座なくと
 申帰り候事御座候、本所ニ而当月廿三日
 大きどの方へ引移り候よし申こし候間、
 いそを一日手伝遣し候つもり御座候、
 さとうニ而ハ御留守中まして私身も
 常もなく、峯さんも御かけん御わるく所ゆへ
 手伝の所かたく断ると申越候へ共、近所へ
 参り候事ニ而ぎりわるく候間、御にしめニ而
 こしらへもたせ一日遣し候つもり御座候、実
 余り近所過、私ま事いや候得共、自分
 にてさがし参り候事は致方なくと存候、
 くれ/\も峯さん脚気、ねきり成候様
 成御薬御かんがへあらせられす候や、御相たん
 申上候、御自分ニハ御早く御勤被成たき御様子も
 御座候へ共、まい年夏中御わつらい続ニ而ハ夫も御むつ
 かしく、こまり候事御座候、
 君御丈ふ様ニ而こんな有難/\事なく、
 神々様へ一生けんめい祈々居まいらせ候、
 くれ/\も私ま事大丈ふ成候間御あんしん
 被下候、少し充腹の痛懐妊中だれニ而
 御座候物のよし、左候ヽ猶更安心御座候、
 食物きひしく致居候事御座候、
 何でも二ッ成、丈ふそだて
 君御あんしん御させ申たく、夫のミ私の
 一心御座候、左候ヽ御母様も御安心の
 御事と御かけなから存上候、何も/\
 用事のみ、御機嫌伺かた/\申上候、
           めてたくかしく
   なを/\めてたくかしく
     五月廿日十一時頃認
            直出ス

※1 遠田…天保期より代々つづく灸師